オードリー・若林正恭と南海キャンディーズ・山里亮太の半生を描いたドラマ『だが、情熱はある』

オードリー春日俊彰役を怪演する戸塚純貴

 しかし、2人は現役バリバリのお笑い芸人だ。現在進行系でキャリアを重ねている。そんな2人をドラマ化するのは難しかったのではないか。

「それは今思えば甘く考えてましたね(笑)。僕はバラエティとかお笑いに造詣が深くなくて、『今年のM-1楽しみだなあ』って言ってくるくらいのライト層なんですよ。恥ずかしながら『たりないふたり』(※山里と若林のユニット。番組化もされた)の存在も知らなかったくらいで。

 でも2人のエッセイが好きだったんです。それで『たりないふたり』とは関係なく、2人の人生をパラレルに描いて、対社会、家族、恋愛みたいに毎回テーマを同一にしてカットバックするように描いていけば、2人の人生は交錯しないけど、1本のドラマとして成立する新しい形ができるんじゃないかって数年前から企画書は出していたんですよ。

 その間に僕が映画の部署に行ったりしていたから、すぐには実現しなかったんですけど、ドラマに戻って、まず錦鯉の朝ドラ(『泳げ!ニシキゴイ』)をやったときに5分×44回で見せていく作り方とか、ドラマのテンポ感とか、人生の切り取り方とかが僕なりにすごく勉強になったんです。昔から、長いスパンで人生を描く大河ドラマとか朝ドラとかに憧れてたんで、そういう企画が通りやすいのは実在の人物だろうと。それでもう1回やりたいと思った時に数年前に出した企画を思い出したんです。

 やるとなった瞬間にもっと突っ込んで調べていくじゃないですか。それで調べれば調べるほど、これは大変な世界に足をつっこんでしまったなって(笑)。コアなファンの方々もたくさんいる世界だから、そういう方々も納得するようなものを作るためには、リスペクトして1個1個丁寧に勉強しながらやるしかないっていうところからスタートした感じです」

「キーポイントになるセリフは“てにをは”を壊さない」

 前編でも語られたとおり、制作チームは2人の半生を徹底的にリサーチした。その中で河野が主人公以外で特に惹かれた人物は誰だったのだろうか。

「やっぱり若林さんのお父さんですね。ご本人も大きな影響を受けたことを語られていますけど、要所要所でお父さんのエピソードが出てくるんですよね。それが1番ドラマ的だったので、1話からお父さんとのラインは引こうと意識的に作りました。そのエピソードが全部実話っていうのがスゴいですよね(笑)。自分じゃ絶対想像できないようなエピソードがたくさん出てきますから」

 実話をベースにした、しかも現代の物語の場合、どこまでを忠実に再現し、どこから脚色するかその塩梅は想像を超える難しさに違いない。河野はどのような考え方で物語を作っていったのだろうか。

「実際にその場で話した言葉はほとんどわからないじゃないですか。だからセリフの多くはキャラクター重視で作っていくしかない。ただ、エッセイとかエピソードトークの中にポツンとすごく良い言葉があったりするわけですよ。

 たとえば、僕の中で一番このドラマの芯になっているセリフが第8話で出てくるんです。それは『フリートーカー・ジャック!』で若林さんが初めてラジオで喋る場面。そのオーディション時に藤井青銅さん(※ドラマでは藤井青銅本人が本人役を演じた)が『人がね、本気で悔しかったり、惨めだったりする話は面白いんだよ』と言うんです。

 僕は若林さんのエッセイを読んだ時に、これをやりたいと思ったんですよ。だからそういうキーポイントになるセリフは“てにをは”も壊さずやろうというのは意識しました。山ちゃんのお母さんの『すごいねえ』とかもそうです」

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