「料理はとにかく楽しい」と語る孫さん
「お店に、政治家のお客さんも来ます。僕、まあまあ喋るの。『ございます』とか丁寧な言葉(敬語)できないけど、職人だから分かりやすいように喋ればいい。今はそう思ってるから。でも、テレビ見て来てくれるお客さんと、長い話ができないのはつらい。僕の性格としてはやっぱりつらいです」
そう、孫さんは料理で人を楽しませたい、人を楽しませるのが好きなのだ。
「料理教室をやりたいですよ。お母ちゃん、料理の好きな人、もっとおいしいの作りたいと思っている人を呼んで教えたい。プロの考え方を教えたら、家の料理ももっとうまくいきますよ。食材無駄にしないで、節約もして、でもおいしい料理。
料理は、絵描くみたいな感じですよ。とにかく楽しい。何十年やってても楽しい。体動けば、ずっと鍋振りたい。
だからね、これ書いてほしいですが、日本にいる外国の方は、絶対ちゃんと日本語を勉強したほうがいい。うちのスタッフも日本へ来て5年、10年の人もいるけど、ケータイはまだ全部中国語。頑張って自分で日本語勉強していても、仕事があってなかなか難しい。
僕は言葉ですごく損したんですよ。みんな親切だから、僕に合わせてくれますよ? でも10年前にやればよかった。10年前ならほんと勉強します。家族にも何回も言われました。ワンちゃんの散歩する時、いろいろ覚えたりもしたけどね、そうじゃなくてもっとちゃんとやればよかった」
孫さんがそんなふうに思っているとは全然思わなかった、と正直に伝える。孫さんははっはっはっと大きく笑ってこう言った。
「思っているより悪かった?(笑)申し訳ないですよ。でもね、ほんとに外国の方、日本語勉強してください。僕が言うから間違いない。間違いないから」
(了。第1回から読む)
【プロフィール】
孫成順/1963年生まれ、中国北京市出身。25歳で中国料理最高位「特級厨師」に。1991年来日、日本各地のホテル、レストランの料理長を歴任し、2007年来日以来の夢だった「中國名菜 孫」を六本木に開店。メディアに多数出演。
取材・文 北村浩子(きたむら・ひろこ)/日本語教師、ライター。FMヨコハマにて20年以上ニュースを担当し、本紹介番組「books A to Z」では2千冊近くの作品を取り上げた。雑誌に書評や著者インタビューを多数寄稿。
