ロンドン市内の公共交通機関で使用される非接触型ICカード「オイスターカード」の改札機には、クレジットカードとデビットカードのタッチ決済に対応しているためVISA、Master、AMEXなどのブランドロゴが見える。2022年撮影(PA Images/時事通信フォト)
センターサーバー方式に切り替わったことで、運賃の変更作業もサーバー側で操作するだけで切り替えることが可能になり、それらの改修作業で発生するコストや時間を縮減することにつながった。
利用者だけではなく事業者にとっても、Suicaは効率的なツールになっている。それゆえに、IC乗車券の代表格ともいえる存在といえる。
地方鉄道が導入をすすめるオープンループの運賃支払い方式
他方、多くの地方私鉄はSuicaに代表されるIC乗車券を導入していない。費用がそれなりにかかるので、そのコストを勘案して、導入できないという事情もあるのだろう。しかし、近年になって、新たな運賃支払いシステムの導入に触手を伸ばす地方私鉄も少なくない。地方私鉄が興味を示しているのが、オープンループと呼ばれる運賃支払い方式だ。
オープンループとは、非接触カード決済に対応したクレジットカードやデビットカードを、IC乗車券と同じように改札機にかざして鉄道運賃の支払いができる仕組みを指す。利用者は、自分が持っている非接触カード決済に対応したクレジットカード、またはデビットカードを使用すればよい。
京都府に路線を有する京都丹後鉄道は、2020年に国内の鉄道事業者で初めてオープンループを導入した。
「弊社はストレスのない移動をできることが重要だと考えています。それにより積極的に移動されるようになり、移動総量が増え、街の活性化に繋がると考えています。そして、ストレスのない移動にはストレスのない決済であることも不可欠であり、その手段を探していたところ、海外の交通で普及しているVisaのタッチ決済を知り、日本での導入を考えました」と話すのは、京都丹後鉄道を運行するWILLERの広報部担当者だ。
京都丹後鉄道は宮福線・宮豊線・宮舞線の3路線を有し、総延長は約114.0キロメートル。これは地方の中小私鉄としては長大な規模といえるが、全32駅のうち有人駅は15駅しかなく、残りは無人駅となっている。
無人駅でも、例えばJR東日本は簡易型のリーダーを設置して、Suicaでの乗降を可能にしている。一方、京都丹後鉄道は車内にリーダーを設置して、運賃の支払いを済ませる仕組みにしている。車内にリーダーを設置すれば、運賃の授受に無人駅・有人駅は関係なくなる。
