関西私鉄は合同でPiTaPaと呼ばれるIC乗車券を推進してきた。南海もPiTaPaを推進してきた鉄道事業者だが、なぜクタッチ決済を導入したのだろうか?
「南海がVisaタッチを導入した理由は、コロナ禍で社会的に非接触が求められたことが大きく影響しています。また、南海は関西国際空港とターミナルのなんば駅を結ぶ特急を運行し、外国人観光客が多いことも要因です。外国人観光客が窓口や券売機できっぷを買うのは大変ですが、クレジットカードでタッチするだけならストレスを感じません。外国人観光客の大半はクレジットカードを所有していますから、そのまま乗車できるオープンループを導入することになったのです」と話すのは、南海電気鉄道広報部の担当者だ。
南海はVisaタッチが利用できる駅を増やす一方で、2023年4月23日からは利用対象ブランドをJCB・American Express・Diners Club・Discoverにも拡げている。
「外国人観光客の大半はVisaで十分に対応できますが、韓国人観光客の多くはJCBを使用しているということがわかりました。そうした状況を踏まえ、JCB・American Express・Diners Club・Discoverにも対応できるようにしたのです」(南海電鉄広報部担当者)
南海と同様に、JR九州も2022年7月からタッチ決済を導入。まずVisaに対応し、同年12月からJCB・American Expressにも対象ブランドを拡大している。
オープンループに対応した南海だが、オープンループ方式の定期券は検討していないという。その理由は、前述した技術的な問題もあるようだが「定期券の利用者は国内在住者になりますから、弊社が以前から導入しているPiTaPaで対応できると考えています」(南海電鉄広報部担当者)という。
一方、Suicaを推進するJR東日本は「『Suicaエリアの拡大』、『モバイルSuica』、『新幹線eチケットサービス』、『地域連携ICカード』、『ほかの交通系ICカードとの相互利用』等によって、Suica1枚で新幹線・在来線を含む鉄道やバス等の公共交通機関をご利用いただけるようにしていますので、現時点でオープンループを導入する考えはありません」(JR東日本広報部)という。
Suicaにしろ、オープンループにしろ、どちらも鉄道利用のハードルを下げ、移動のストレスを軽減するツールになっていることは間違いない。これらが切磋琢磨し、普及することで利用者拡大のチャンスも生まれる。昨今、鉄道業界はコロナ禍・少子高齢化により利用者減という頭の痛い問題に直面している。それだけに、Suicaやオープンループの取り組みが鉄道業界を再活性化させることに期待したい。