2019年撮影、モスクワ地下鉄の改札機。非接触型決済の対応ブランドが各種クレジットカードだけでなく、デビットカードである中国の銀聯カードなどにも対応している(Avalon/時事通信フォト)

2019年撮影、モスクワ地下鉄の改札機。非接触型決済の対応ブランドが各種クレジットカードだけでなく、デビットカードである中国の銀聯カードなどにも対応している(Avalon/時事通信フォト)

 これまでクレジットカードやデビットカードは支払いに時間を要していた。カードの読み取りに時間がかかると、一瞬で通過することが求められる改札機前に行列ができてしまう。その混雑はドラブルを誘発する原因にもなる。

 そうした事情もあって、クレジットカードやデビットカードがそのまま乗車券として開発・導入されることはなく、鉄道業界では処理速度スピードが速いSuicaをはじめとするFeliCaと呼ばれる技術を内蔵したIC乗車券が普及していった。

 しかし、技術革新によってクレジットカードやデビットカードにも非接触型の決済が可能になり、支払いのスピードは格段に上がった。乗車券として十分に通用するようになり、近年はVisaタッチのような新たな展開が始まっている。

 クレジットカードのタッチ決済を使う利点は、鉄道事業者がカード発行・管理のコストを負担しなくていいという点にある。つまり、鉄道事業者にとって低コストで導入できるというメリットがある。それが地方私鉄での普及を後押しした。

 しかし、クレジットカードでのタッチ決済には泣きどころもある。高校生は家族カードなどを所有することはできるものの、自分自身のクレジットカードを発行できない。地方の鉄道利用者は通学する高校生という地域が多い。これではタッチ決済を導入しても、その利便性を享受できるのはほぼ観光客に限定される。いくらオープンループの導入コストが低いとはいえ、それでは費用対効果が薄いと判断されてしまうだろう。

 また、この方式のタッチ決済はクレジットカードによる決済なので、1日分の運賃をまとめて請求する後払い方式を採用している。上限金額を設定することで1日乗車券などの企画乗車券として利用することはシステム的に容易だが、他方で1か月、3か月、6か月などの単位で金額が決まることや区間内なら途中下車も可能なルートが複雑化する通勤・通学定期券などの設定は難易度が高かった。それらが導入の障壁として残っていた。

 さらにオープンループといった堅苦しい名称ではなくVisaタッチという名称が一般的になっていることからも窺えるように、日本ではこれまで、改札機ではVisaしか対応していなかった。

 それでも技術革新や普及に伴ってオープンループを取り巻く状況は変わり、いくつもの課題はクリアされつつある。

インバウンド対応でクレジットカードのタッチ決済を拡大

 例えば、大阪を地盤にしている南海電鉄は、2021年4月からVisaタッチ決済を実験的に導入。京都丹後鉄道が車内にリーダーを設置したのに対して南海は国内の鉄道事業者では初めてとなるタッチ決済に対応した改札機を設置した。

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