証拠隠滅ではないか
その間、警察は執念の捜査を続けてきた。事件から1か月以上が経っても、「両親のご遺体は、警察関連施設に安置され、検証が続けられていた」(前出・澤瀉屋関係者)という。同様に、現場となった自宅には、いまだ規制線が張られたままだ。
「事件直後の大規模な現場検証が終わって閑散としてからも、時折捜査関係者が出入りしていたと聞いています。捜査を進めるための新たな“確認事項”が出てくることがあり、両親の遺体も自宅も、重要な証拠としてそのままにしておかざるを得なかった」(捜査関係者)
両親の頭部周辺にはかすかな「傷」が認められたという。
「ビニール袋をかぶせたとする証言に従えば、睡眠薬から覚醒した両親が、袋を剥ぎ取ろうとした際についた傷の可能性がある。自殺願望があっても、“生きようと抵抗した”のであれば、過去の判例では殺人罪が適用されたケースがある」(別の全国紙社会部記者)
目下、警察が目をつけているのが、「時間のズレ」だ。
「18日朝の発見時、猿之助容疑者は首を吊ろうとしており、命に別状はないながらも、意識は朦朧とした状態でした。かたや、リビングの床に寝かされていた両親のうち、母親はすでに死後硬直が始まっていました。死後硬直の状態から、睡眠薬をのんだ前夜には亡くなっていたと考えられています。つまり、母親の死から、猿之助容疑者が発見されるまでは10時間以上もの時間が空いている計算になります」(前出・別の全国紙社会部記者)
搬送時、猿之助からも薬物の反応が見られた。猿之助が睡眠薬をのんだ時間帯は定かでないが、年齢や体格差から、薬の効果に個人差があるのは当然だろう。
「薬で死にきれなかった猿之助さんが、あとからひとりだけ覚醒することはあり得ないわけではない。しかし不可解だったのは、発見されるまでの猿之助さんの行動です。
睡眠薬の影響下にあり、かつ、これから命を絶とうとする人間の行動として、わざわざビニール袋と薬のパッケージだけを捨てに行くのは不自然と言わざるを得ませんし、証拠隠滅も疑われます。捨てに行ったという証言そのものへの疑義も生じてきます。前提が覆れば、“そもそも、心中だったのか”という点に立ち返らざるを得ない」(前出・捜査関係者)
実際、もしビニール袋や薬袋があれば、それらの指紋などから早期に事件の全容は明らかになっただろう。忽然と消えた証拠という巧妙トリックが、猿之助と警察の長い暗闘を招いたことは間違いない。
※女性セブン2023年7月13日号