2016年4月14日の熊本地震から2週間後、地震により崩壊した道路と南阿蘇鉄道の第一白川橋梁(時事通信フォト)

2016年4月14日の熊本地震から2週間後、地震により崩壊した道路と南阿蘇鉄道の第一白川橋梁(時事通信フォト)

復旧の妨げになる費用の大きさを克服した方法

 南阿蘇鉄道だけに限った話ではなく、一般的に通勤・通学といった日常的な利用が乏しい鉄道路線は、どうしても黒字になりにくい。そのため、多くのローカル線は慢性的な赤字に陥り、被災時に再建を断念。そして、廃線に追い込まれる。福島県の岩泉線は2010年に土砂崩れで不通になり、その後は復旧が模索されたものの2014年で廃線になった。

 鉄道での再建ではなく、BRT・路線バスへと転換される路線もある。2011年の東日本大震災で被災した大船渡線は、2019年に気仙沼駅―盛駅間が廃止。前谷地駅―大船渡駅間が鉄道からBRTへと切り替えられた。

 2017年の九州北部豪雨で被災した日田彦山線のうち、添田駅―夜明駅間は鉄道での再建を断念。以降、沿線自治体とJR九州などが協議し、BRTへ転換して再建することが決まった。その準備が進められ、開業を控えていた矢先の7月10日に豪雨が発生。それにより、BRT専用道の一部区間が崩壊した。

 日田彦山線を鉄道で残すのもBRTとして維持することも、採算という観点だけで見れば難しい。そして、それは南阿蘇鉄道も同じだ。南阿蘇鉄道も多額の費用がかかることは復旧の妨げになっていた。

「鉄道を復旧させるには、約67億円が必要との試算が出ていました。ローカル線ですから、そんな多額な資金を捻出できる余裕はありません。そこで国からの財政支援を受けることにしました。これまで鉄道の復旧は国が2分の1、地元自治体が4分の1、鉄道事業者が2分の1という負担になっていました。しかし、2023年4月から新制度が導入されたのです。新制度により、再建の負担は政府が2分の1、残り2分の1が地元自治体と変更され、地元自治体が負担する2分の1の費用のうち95パーセントが交付税で賄われることになったのです。実質的に地元自治体の負担は2.5パーセントに縮減されたことは、復旧を大きく後押ししたと受け止めています」(南阿蘇鉄道再生協議会事務局の担当者)

 そのほか、南阿蘇鉄道が保有していた鉄道施設は新たに設立された一般社団法人南阿蘇鉄道管理機構に譲渡され、同機構が維持・管理する。こうしたスキームにより、南阿蘇鉄道は鉄道の運行に専念するとともに財政的な負担を大幅に軽減させている。

 多額の税金を費やして鉄路を復旧し、鉄道施設の管理にも税金を充てる。誰も使わない赤字路線を税金で延命させても意味がない。むしろ税金の無駄遣いという批判もあるだろう。

 しかし、一概に赤字路線の復旧が税金の無駄と切り捨てることはできない。なぜなら、被災した赤字路線を復旧させたことにより、沿線外から多くの利用者を呼び込んだ只見線のような例も出てきているからだ。

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