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男性専門医療脱毛「ウルフクリニック」閉鎖で被害拡大、アディーレ法律事務所が集団訴訟提起

横浜地裁(時事通信フォト)

訴訟へ(写真はイメージ。時事通信フォト)

 男性専門の医療脱毛「ウルフクリニック」が突然店舗を閉鎖し、契約していた男性が本来受けられるはずだった施術を受けられなくなり、返金も受けられなくなっている問題で、2023年7月19日、被害者の相談窓口を設置していたアディーレ法律事務所が、同クリニックの医師を相手取って集団訴訟を提訴したことを発表した。

原告110人が被告医師5人に2000万円超を請求

 ヒフコNEWSで伝えているように、ウルフクリニックは全国で5つのクリニックを運営し、男性専門に安価なコース料金をうたって医療脱毛を提供していた。ところが、この4月に同クリニックは突然店舗を閉鎖し、契約した男性から施術を受ける機会を奪い、返金にも応じない状況となっていた。

 しかも、経営に関与していたTBIが破産手続きを申請し、ウルフクリニックの再開の見込みが一層立たなくなっていた。

 一部の医療機関やエステティックサロンが、ウルフクリニック突然閉鎖の被害者を対象として、安価に受け入れる救済の動きも増えていた。しかし、それでも、とても契約者の施術すべてに対応できるわけではなく、焼け石に水の状況とも言えた。

 そうした状況の中で、ウルフクリニックの被害者を対象として相談窓口を設置していたアディーレ法律事務所がこの7月19日、「東京、大阪、埼玉地方裁判所において、第1陣の集団提訴を行いました」と発表した。

 第1陣訴訟では、原告110人から被告医師5人に対して、総額2195万2500円の請求をしている。

破たんした運営関与の企業と集団訴訟の矢面に立つ医師

同事務所によれば、ウルフクリニックの被害状況は次の通り。

・相談件数:761件

・契約総額:1億4758万円

・平均契約額:約21万円

・最高契約額:約60万円

・契約額分布:25万円以上が全体の4割で、全身+VIO+顔(ヒゲ)10回コース(30万7000円)の契約が最多

・年齢層:20~60代(20代が最多)

・契約者性別:男性のみ

 アディーレ法律事務所によると、ウルフクリニックが、男性の医療脱毛に特化していたこともあり、被害者全員が男性で、20代が最も多く、次いで30代となっていた。現在までに少なくとも1000人が返金に応じてもらえず苦しんでいる。中には、営業を突然停止した4月の直前に契約し、一度も施術を受けられない人もいる。

 ヒフコNEWSで伝えているように、クレジットカード支払いをした人については、一部返金を受けられるケースも出ているようだが、現金払いした人などはなすすべがない。今後、訴訟に加わる人は増える可能性もある。

 また、今回の集団訴訟で被告になったのは医師である。ウルフクリニックでは、TBIという会社が運営に関与し、さらに複数の会社が関連するという情報もある、それらの会社が実質的には経営に当たった可能性もある。医師がどれだけ経営に関与していたかは不明だが、TBIが突然破たんし、医師だけが集団訴訟の矢面に立つ状況については、医師にとっては想定外だったかもしれない。

 同様な企業などと医師との関係にある運営形態を取るケースは、ほかの美容クリニックでもありそうだ。今回のウルフクリニックの問題をきっかけに、院長を務める医師はこれまでよりもトラブルの可能性を警戒するようになって不思議はない。今後の美容医療を考える上でも集団訴訟の行方は注目される。

参考文献

ウルフクリニックの被害者救済へ、集団訴訟を提起しました

ウルフクリニック「経営関与の会社」破産へ、美容医療の信頼性に懸念抱かせかねない問題

男性医療脱毛ウルフクリニック突然閉鎖も根は共通か、診療所の倒産が過去30年で最多、東京商工リサーチ調査

医療脱毛クリニック突然閉院、SNSで嘆きの声、相談窓口の設置も

男性専門医療脱毛ウルフクリニック閉鎖で、救済の動きが広がる

脱毛サロン倒産急増、予約トラブルなど影響、帝国データバンク

男性医療脱毛ウルフクリニック突然閉鎖、女性も知っておきたいクレジット返金ルール

【プロフィール】
星良孝/ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表、獣医師、ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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