このようなネット上における『VIVANT』の圧倒的な強さこそ、ネットメディアが考察記事を次々にアップしている最大の理由。日ごろやり取りをしている3人のネットメディア編集者に『VIVANT』について話を聞いたところ、「できるだけ多くの記事を配信したい」「PVが最も見込めるのは考察記事」という意見が一致していました。ネットメディアの編集者や記者たちはこれまでにないくらいドラマを繰り返し見て自ら考察しつつ、SNSのコメントに目を光らせて情報収集しながら、複数の記事をアップしているようなのです。
現在ネットメディアがアップしている主な記事は、放送前が「次回予告と見どころ紹介」「前回の振り返り」「スタッフやキャストのインタビュー」、放送後が「物語のおさらい」「視聴率速報」「考察」。なかでも、最も数が多いのは放送終了直後から翌日で、「考察の答え合わせや新たな考察がネット上に飛び交う」という状態が続いています。
さらに考察関連の記事は翌々日以降もアップされ、放送当日までほぼ途切れません。『VIVANT』における放送後の盛り上がりは、期待感が募る放送前や臨場感で沸く放送中を大きく上回っているほか、これまでの最高レベルだった『あなたの番です』(日本テレビ系)や『最愛』(TBS系)などの長編ミステリーをしのぐものがあります。
放送後の盛り上がりは、制作サイドがそれだけ多くの謎や伏線を散りばめているからこそであり、登場人物の表情、目線、仕草、セリフ、動き、さりげないインサートカットなどの細部まで福澤克雄監督の演出には仕掛けがびっしり。さらに、公式Xでタイミングよく謎や伏線のネタばらしをしたり、ホームページや関連グッズなどにもヒントのようなものを仕込んだりなどの工夫や遊び心も含め、さまざまな要素を交えて考察の楽しさを加速しています。
「考察がハズれても問題ない」理由
スタッフ・キャストと視聴者のネットを通じたやり取りが活発なので、ネットメディアとしては、その良好な関係性を傍観しているのではなく、両者の間に入ってPVを稼ぎたいところ。その際、これまでのように「スタッフ・キャストからの発信を視聴者に伝える」だけでは不十分で記事数も増やせないため、「視聴者側に立って一緒に考察を共有していこう」というスタンスの変化が感じられます。
前述のネットメディア編集者は、「考察がハズれたとしても全然いいと思っています。多少叩かれるでしょうが、逆にハズれても『よく考えた』とほめられることもありますから」と言っていました。ネットメディアが視聴者と一緒に考察を楽しんでいるようにも見えますし、親近感を抱かせているのかもしれません。
さらに、「SNSに書き込まれた考察をまとめてくれる」という便利さもあって視聴者の反応が上々であるほか、考察がハズれても個人が叩かれることはないなど、これといったリスクはなさそうです。