砂金探しの様子(イメージ、Lehtikuva/時事通信フォト)

砂金探しの様子(イメージ、Lehtikuva/時事通信フォト)

もうすぐ採掘が始められる

 組員が聞かされたのは、コンプレッサー採掘ではなく、海岸に小屋を建てて水が浸入してこないように穴を掘り進め、シャフトを取り付けて、採掘するという方法だったらしい。これなら人が死ぬ可能性も限りなく低くなる。

 採掘がはじまり、現地に残った若い衆から穴掘りの状況が動画で送られてきた。ある程度の深さまで掘られた穴にはシャフトが取り付けられ、テレビ東京の人気番組『緊急SOS!池の水ぜんぶ抜く大作戦』で見たような、大型のポンプで水がドンドン汲みだされている様子が映っていた。「もうすぐ採掘が始められると思う」と若いのに聞かされ、組員はその時を今か今かと待っていたのだ。

 ところがその時はいっこうにやってこなかった。いくら汲みだしても潮の流れによって海水はしみ込み、流れこんできたのだ。海水が入れば、掘った穴はまた砂に埋まっていく。その繰り返しだったのだ。「若いのは、次はこういう方法でここまで掘ればなんとかなると、A氏に言われたという。それがうまくいかないと、作業をするフィリピン人から”ここの部分をこうすれば大丈夫だ”と言われたと説明する。だから金を送ってくれとその繰り返し。もう止めだ、無理だと言っても一攫千金に目がくらんでいる若いのはあきらめがつかなかった」。

 結局、儲かったのは話を持ってきたA氏と働いていたフィリピン人で、組員の元には1銭も入らなかった。海外で人を騙すにはまず同国人を狙うというのは、日本人外国人を問わず海外で詐欺やスリ、窃盗を行ったことのある者がよく言うセリフだ。詐欺で稼ぐのもシノギの1つという暴力団の組員なら、そこは十分わかっていたはずだが、一攫千金という夢のある投資話には弱かったということだ。

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