──まさに実りある武者修行だったんですね。
はい。実は、そのツアーのリハーサルの前日に、夢を見たんです。ずっと左手でマイクを持って歌っていたんですけど、夢の中では右手で持っていたんですね。考えてみたら、デビュー当時は右手でマイクを持っていたんですよ。これは初心にかえるべきということなのかな……と思って、リハーサルからマイクを右手で持つようにしたら、自分の中で何かが大きく変わった感覚があったんです。歌いやすさとか、無駄なことを考えずに歌に没頭できる感覚があって、そこから急展開で真っ暗闇に光が射したように変わりました。
──そのお話を伺うと、アルバムの先行配信曲『Spotlight 〜光の先へ〜』という曲がTAKAHIROさんの状況にまさにリンクしてくるような感じがします。この曲は作曲がATSUSHIさんで、作詞が清木場俊介さんなんですよね。
はい。ぼくが人生でもっとも憧れた2人がぼくに曲をプレゼントしてくださったというのは、想像もしていなかったことです。ぼく自身のもがき方や、あがき方や、どういうトンネルの中を歩いてきたのかということを、いっしょに活動しているわけではない俊さんが手に取るようにわかってくださって歌詞にしてくださった。それは本当にぼくのことを気にかけて下さっているからでしかないので、心配してくださっていたんだなと思うと、感謝もありますし、ぼくは幸せ者だなと思いました。だからこそ、この曲をただ有難く受け取るだけではなくて、この曲を歌っていくことで殻を破って、また1つ成長した姿をお見せすることがお2人への恩返しになるのかなと。歌うたびに成長していきたいですし、大事に歌っていきたいと思っています。
──この曲は10周年のために制作されたんでしょうか?
実はそれよりも前から、お2人が「TAKAHIROのために曲をプレゼント出来たらいいね」というお話をして下さっていたそうなんです。それがたまたま10周年のタイミングと重なって、サプライズプレゼントのような形でいただきました。お2人が曲を作ってくださったことを初めて聞いたときには、本当に感動しました。この曲で戦うべきだなと思い、ソロツアーの1曲目という自分がいちばん緊張する状況の中で、裸一貫で勝負するような気持ちで歌わせていただきました。
撮影/中野修也(TRON)