スポーツ

蛯名正義氏が振り返る 美浦トレセンの「南北問題」、栗東との「東西問題」

2016年のセントライト記念では皐月賞1着、ダービー3着のディーマジェスティが貫録勝ち。蛯名正義騎手にとっては同レース5度目の優勝だった(写真/JRA)

2016年のセントライト記念では皐月賞1着、ダービー3着のディーマジェスティが貫録勝ち。蛯名正義騎手にとっては同レース5度目の優勝だった(写真/JRA)

 1987年の騎手デビューから34年間にわたり国内外で活躍した名手・蛯名正義氏は、2022年3月から調教師として活動中だ。蛯名氏の週刊ポスト連載『エビショー厩舎』から、トレーニング・センターの南北問題、東西問題についてお届けする。

 * * *
 美浦トレーニング・センターに来たことがある人は分かると思うのですが、正門から延びる広い通りを中心に、北と南に分かれて厩舎の建物が連なっています。かつては競馬新聞の馬柱なども厩舎の場所によって「美浦北」「美浦南」というふうに書かれていましたよね。北馬場、南馬場と、それぞれに調教コースがありました。

 北と南でいがみあったりすることはなかったけれど、競争意識はありました。たとえば「また南からGI馬が出たな」とか「こっちも頑張らないとな」とか。あるいは「南にいい“あんちゃん”が入ったみたいだな」というように、新人騎手をみんなで応援してやろうというような雰囲気もありました。僕の所属した矢野進厩舎は北だったので、当初は北の先生方に可愛がっていただきました。トロットスターの中野栄治先生、アパパネの国枝栄先生も「美浦北」です。

 厩舎の設えは全く同じだったし、人的交流はあったし、日常生活の場は同じだったので、「対立」といえるようなものではありません。もともと競争が好きな人たちが集まっているから(笑)、自然にそうなったのでしょう。いい意味で切磋琢磨していました。

 有力馬がいるかいないかでは取材に来るマスコミの数が違う。競馬記者は北と南に担当が分かれていたけれど、GIの前になると来るテレビはスタッフも多いし、やはり有力馬を取材したいでしょう。女性キャスターなんかも来て、賑やかになる。そんなところへ南の厩舎のスタッフがふらりとやってきたりすると「なんだ、こっちはテレビカメラが多いな」なんて羨ましそうだったり(笑)。

 1992年に南馬場のコースのひとつが、細かく砕かれた木片を敷き詰めたウッドチップコースに改修されました。ダートコースにくらべるとクッションがよく、脚元への負担が少ないので、みなここで調教したくなる。北馬場でも同様にしたかったらしいのですが、排水の関係などで難しかった。それでしだいに北の厩舎も南馬場へ調教に出向くようになった。

関連キーワード

関連記事

トピックス

小島瑠璃子(時事通信フォト)
《亡き夫の“遺産”と向き合う》小島瑠璃子、サウナ事業を継ぎながら歩む「女性社長」「母」としての道…芸能界復帰にも“後ろ向きではない”との証言も
NEWSポストセブン
会見で出場辞退を発表した広陵高校・堀正和校長
《海外でも”いじめスキャンダル”と波紋》広陵高校「説明会で質問なし」に見え隠れする「進路問題」 ”監督の思し召し”が進学先まで左右する強豪校の実態「有力大学の推薦枠は完全な椅子取りゲーム」 
NEWSポストセブン
起訴に関する言及を拒否した大谷翔平(写真/アフロ)
大谷翔平、ハワイ高級リゾート開発を巡って訴えられる 通訳の次は代理人…サポートするはずの人物による“裏切りの連鎖” 
女性セブン
日本体操協会・新体操部門の強化本部長、村田由香里氏(時事通信フォト)
新体操フェアリージャパンのパワハラ問題 日本体操協会「第三者機関による評価報告」が“非公表”の不可解 スポーツ庁も「一般論として外部への公表をするよう示してきた」と指摘
NEWSポストセブン
スキンヘッドで裸芸を得意とした井手らっきょさん
《僕、今は1人です》熊本移住7年の井手らっきょ(65)、長年連れ添った年上妻との離婚を告白「このまま何かあったら…」就寝時に不安になることも
NEWSポストセブン
暴力問題で甲子園出場を辞退した広陵高校の中井哲之監督と会見を開いた堀正和校長
《広陵高校、暴力問題で甲子園出場辞退》高校野球でのトラブル報告は「年間1000件以上」でも高野連は“あくまで受け身” 処分に消極的な体質が招いた最悪の結果 
女性セブン
代理人・バレロ氏(右)には大谷翔平も信頼を寄せている(時事通信フォト)
大谷翔平が巻き込まれた「豪華ハワイ別荘」訴訟トラブル ビッグビジネスに走る代理人・バレロ氏の“魂胆”と大谷が“絶大なる信頼”を置く理由
週刊ポスト
お仏壇のはせがわ2代目しあわせ少女の
《おててのシワとシワを合わせて、な~む~》当時5歳の少女本人が明かしたCM出演オーディションを受けた意外な理由、思春期には「“仏壇”というあだ名で冷やかされ…」
NEWSポストセブン
広陵野球部・中井哲之監督
【広陵野球部・被害生徒の父親が告発】「その言葉に耐えられず自主退学を決めました」中井監督から投げかけられた“最もショックな言葉” 高校側は「事実であるとは把握しておりません」と回答
週刊ポスト
薬物で何度も刑務所の中に入った田代まさし氏(68)
《志村けんさんのアドバイスも…》覚醒剤で逮捕5回の田代まさし氏、師匠・志村さんの努力によぎった絶望と「薬に近づいた瞬間」
NEWSポストセブン
自宅で亡くなっているのが見つかった中山美穂さん
《ずっと若いママになりたかった》子ども好きだった中山美穂さん、元社長が明かした「反対押し切り意思貫いた結婚と愛息との別れ」
週刊ポスト
「週刊ポスト」本日発売! 「石破おろし」の裏金議員「入閣リスト」入手!ほか
「週刊ポスト」本日発売! 「石破おろし」の裏金議員「入閣リスト」入手!ほか
NEWSポストセブン