『TAROMAN』の生みの親である映像作家の藤井亮氏
本当に実在していた番組と勘違いする人たちも続出
『TAROMAN』は放送されるたびに反響を巻き起こした。興味深いのは、多くの人が1970年代に放送されていたという設定を守って反応したことだ。一方で、本当に騙されている視聴者も少なからずいた。
「もちろん面白がってくれたら嬉しいなとは思ってたんですけど、こんなに乗っかってくれるとは思わなかったというのが正直な話ですね。脚本家の野木亜紀子さんまで乗っかってくれたんで。
本当のドキュメンタリーと勘違いしてしまう人に対してどこまでケアするかは悩みどころでした。一応『タローマンヒストリア』以降は、冒頭に『フィクションです』(※「この作品における人物、事件その他の設定は、すべてフィクションであります。ただし、岡本太郎の作品と言葉は実在する」)という注釈テロップも入れているんですけど、それすらもネタに思ってしまう方もいましたし、途中から見ちゃったらわからないですし、それがテレビ放映の難しさかなと思いました」
タローマンはSNSでファンアートが数多く投稿されたり、コミックマーケットなどでコスプレする人があらわれたり、ひとり歩きするかのように人気が拡大していった。
「そうなってくれたらいいなと思ってはいたものの、結構本気で作っている方が大勢いて驚きましたね。ひとり歩きしていくと都市伝説っぽさが増していくという嬉しさがありました」
過去のヒーローものでは子供たちが真似て絵を描きやすいようなデザインをしたとも聞くが、藤井は特に意識しなかったという。
「逆に描きやすくなくてもいいのかなという気持ちがあって。他のヒーローってどんどんデザインとして洗練されていっているんですけど、なんかそうじゃない、ヒーローらしからぬ感が出ればいいのかなと思って、非常に癖が強いまま、岡本太郎のアート的な要素を削ぎ落としたりしないようにデザインしました。
やっぱり太陽の顔が一番印象的なので、それをベースにすることは決めていたんですけど、普通に作るとどうしても『太陽の塔マン』になっちゃう。それでどうしようかなと思っていたら、岡本太郎が太陽の塔を作る前に、『若い太陽の塔』という作品を作っているんですよね。これをベースにしようと考えて作っていきました」