芸能

【TAROMAN】仕掛け人が明かす「NHKなのにフェイクドキュメンタリーが放送できた理由」【短期連載・てれびのスキマ「『フェイク』のつくりかた」】

『TAROMAN』の生みの親である映像作家の藤井亮氏

『TAROMAN』の生みの親である映像作家の藤井亮氏

 岡本太郎の言葉と作品を伝える特撮番組『TAROMAN』が視聴者を惹きつけた要素のひとつは、綿密に設定されたフェイクドキュメンタリー的要素だ。かつて1970年代に放送された特撮番組という架空の設定となっており、今回放送の『TAROMAN』はその再放送であるという体裁が取られた。

 初回放送ではフィクションであることを明かすネタばらしがなかったことや、本編後にサカナクション・山口一郎が『TAROMAN』マニアとして愛を語るインタビューパートが挿入された構成の妙もあって、本当に1970年代に実在していたと勘違いをする視聴者も続出した。『TAROMAN』を手掛けた映像作家・藤井亮氏は、意外にもNHKはフェイクドキュメンタリー的な演出に協力的だったと明かす。

 聞き手は、『1989年のテレビっ子』『芸能界誕生』などの著書があるてれびのスキマ氏。現在、ネットで話題の「フェイクドキュメンタリー」に意欲的に取り組んできたテレビ番組の制作者にインタビューを行なう短期シリーズの第1回【前後編の後編。文中一部敬称略】。

 * * *

「全員平成生まれ」特撮回りのスタッフで作り上げた“1970年代の空気感”

『TAROMAN』は元々、「展覧会 岡本太郎」の関連番組として制作したものだ。『テクネ 映像の教室』の委嘱作品「サウンドロゴしりとり」などで共に仕事をし、藤井亮の企画力や制作力を目の当たりにしたNHKエデュケーショナルのプロデューサーの倉森京子が、藤井に白羽の矢を立てた。「岡本太郎の言葉を伝える番組」というオーダーの中、1970年代の特撮モノのフォーマットに至った経緯を監督の藤井亮は次のように語る。

「岡本太郎関係の番組って、NHKではドキュメンタリーからドラマまでほとんど全部やっちゃっているという状況で、そうではない、なんか面白いことをやりたいというのがあったんです。

 それで、太陽の塔を実際に見た人は絶対にみんな想像すると思うんですけど、太陽の塔からレーザーが出て街を焼き払っているようなイメージが浮かんできたんです。それを映像化したら楽しいんじゃないかって。

 他には、岡本太郎の言葉を歌にしてミュージックビデオのようなものを作る案もあったんですけど、打ち合わせで『TAROMAN』の案を最初に出したら、みんなのウケが一番よくてもうこれがいいと」

 藤井は1979年生まれ。幼少期、『ウルトラマン』や『仮面ライダー』の新作が制作されていない特撮谷間の世代だ。特撮モノの多くは再放送で見たという。そんな彼が、目の肥えた特撮ファンをも唸らせる特撮作品を制作できたのはなぜなのだろうか。

「実は今回の特撮回りのスタッフは、全員平成生まれなんです。僕も含めて『TAROMAN』が放送されていた設定の1972年以前に生まれた人がいない。特撮をメインでやってくれた石井那王貴(特殊映画研究室)くんも相当若くて、当時の特撮がすごく好きで研究している人。全員リアルタイムじゃないからこそ、余計に憧れとか作ってみたいという情熱があったんだと思います。

 制作スタッフは、SNSでそれっぽいことをやっている人を探しては、声をかけたりして集めました。最初は『ホントにそんなことやるの?』って怪しんでましたね(笑)。普段からちょっとこの人面白いなという人は気に留めています。『帰ってくれタローマン』(今年8月放送)で出てくる『ウルトラQ』のようなタイトルも、ああいったマーブリングの映像を現在でも手がけている大場雄一郎さんという方がいたので声をかけました」

関連キーワード

関連記事

トピックス

どんな役柄でも見事に演じきることで定評がある芳根京子(2020年、映画『記憶屋』のイベント)
《ヘソ出し白Tで颯爽と》女優・芳根京子、乃木坂46のライブをお忍び鑑賞 ファンを虜にした「ライブ中の一幕」
NEWSポストセブン
相川七瀬と次男の凛生君
《芸能界めざす息子への思い》「努力しないなら応援しない」離婚告白の相川七瀬がジュノンボーイ挑戦の次男に明かした「仕事がなかった」冬の時代
NEWSポストセブン
俳優の松田翔太、妻でモデルの秋元梢(右/時事通信フォト)
《松田龍平、翔太兄弟夫婦がタイでバカンス目撃撮》秋元梢が甥っ子を優しく見守り…ファミリーが交流した「初のフォーショット」
NEWSポストセブン
世界が驚嘆した大番狂わせ(写真/AFLO)
ラグビー日本代表「ブライトンの奇跡」から10年 名将エディー・ジョーンズが語る世界を驚かせた偉業と現状「リーチマイケルたちが取り戻した“日本の誇り”を引き継いでいく」
週刊ポスト
佳子さまを撮影した動画がXで話題になっている(時事通信フォト)
《即完売》佳子さま、着用した2750円イヤリングのメーカーが当日の「トータルコーディネート」に感激
NEWSポストセブン
国連大学50周年記念式典に出席された天皇皇后両陛下(2025年9月18日、撮影/JMPA)
《国連大学50周年記念式典》皇后雅子さまが見せられたマスタードイエローの“サステナブルファッション” 沖縄ご訪問や園遊会でお召しの一着をお選びに 
NEWSポストセブン
豪雨被害のため、M-1出場を断念した森智広市長 (左/時事通信フォト、右/読者提供)
《森智広市長 M-1出場断念の舞台裏》「商店街の道の下から水がゴボゴボと…」三重・四日市を襲った記録的豪雨で地下駐車場が水没、高級車ふくむ274台が被害
NEWSポストセブン
「決意のSNS投稿」をした滝川クリステル(時事通信フォト)
滝川クリステル「決意のSNS投稿」に見る“ファーストレディ”への準備 小泉進次郎氏の「誹謗中傷について規制を強化する考え」を後押しする覚悟か
週刊ポスト
アニメではカバオくんなど複数のキャラクターの声を担当する山寺宏一(写真提供/NHK)
【『あんぱん』最終回へ】「声優生活40年のご褒美」山寺宏一が“やなせ先生の恩師役”を演じて感じた、ジャムおじさんとして「新しい顔だよ」と言える喜び
週刊ポスト
林家ペーさんと林家パー子さんの自宅で火災が起きていることがわかった
《部屋はエアコンなしで扇風機が5台》「仏壇のろうそくに火をつけようとして燃え広がった」林家ぺー&パー子夫妻が火災が起きた自宅で“質素な暮らし”
NEWSポストセブン
1年ほど前に、会社役員を務める元夫と離婚していたことを明かした
《ロックシンガー・相川七瀬 年上夫との離婚明かす》個人事務所役員の年上夫との別居生活1年「家族でいるために」昨夏に自ら離婚届を提出
NEWSポストセブン
“高市潰し”を狙っているように思える動きも(時事通信フォト)
《前代未聞の自民党総裁選》公明党や野党も“露骨な介入”「高市早苗総裁では連立は組めない」と“拒否権”をちらつかせる異例の事態に
週刊ポスト