ライフ

八冠制覇に王手をかけた藤井聡太 タイトル戦で訪れた全国「対局の宿」での交流秘話

勝負めしも注目を集めた(写真は『雨情の宿 新つた』の「いわきの魚とじゅうねんの天ざるそば」)

勝負めしも注目を集めた(写真は『雨情の宿 新つた』の「いわきの魚とじゅうねんの天ざるそば」)

 前人未踏の八冠全制覇に王手をかけた藤井聡太七冠。天才棋士と、対局を支えた全国の交流秘話を聞いた。

『雨情の宿 新つた』(福島県いわき市常磐湯本町吹谷58)

おやつで食べた地元の銘菓「じゃんがら」(みよし)。宿ではミニサイズを買える

おやつで食べた地元の銘菓「じゃんがら」(みよし)。宿ではミニサイズを買える

第34期竜王戦 七番勝負 第3局(2021年10月30日・31日)

 藤井聡太三冠が史上最年少の四冠に輝くか、豊島将之竜王が3連覇達成するかで注目を集めた2021年の竜王戦。七番勝負の第3局の舞台となった「雨情の宿 新つた」にとって、将棋のタイトル戦の会場になるのは初めての経験だった。5代目の女将・若松佐代子さんが振り返る。

「打診の電話を受けた頃はコロナ禍真っ最中で、宿を休みたいぐらい部屋は空いていました。選ばれたことは大変光栄で嬉しかったです。10月の対局に向け8月下旬から打ち合わせが始まり、日が近づくにつれ、藤井三冠がいらっしゃるんだと実感が湧いてきました」

 新型コロナ対策のため、藤井三冠を担当する接客スタッフは、米村一哉さん1人だけに絞った。

「対局中の部屋にお茶とおやつを初めて持っていった時は、緊張で手が震えて、落としてしまったらどうしようと思いながら運びました」(米村さん)

 料理長が考案した“勝負めし”は1日目は地元ブランドトマト「サンシャイントマト」を使った「麓山高原豚ロース勝つカレー」、2日目は“食べると10年長生きする”と言われる地元産じゅうねん(えごま)だれを添えた「天ざるそば」が選ばれた。滞在中の夕食で松茸土瓶蒸しを供し、米村さんが美味しい食べ方を説明した。

 史上最年少の14歳2か月でプロ棋士になり、デビュー戦は加藤一二三九段との竜王戦だった藤井三冠は、宿を発つ朝、「初心」と書いた色紙を女将に贈った。

「初心の2文字を見て、『ドキッとしますね!!』と私が話したら、笑っていらっしゃいました(笑)」

 大広間での旅館のスタッフ全員との記念撮影でも、優しい笑顔を見せた。その時の色紙や全員で一緒にガッツポーズをとって撮影した写真は、館内1階のロビーに飾られている。

宿泊中の夕食に登場した松茸土瓶蒸し

宿泊中の夕食に登場した松茸土瓶蒸し

滞在中、接客を担当した米村一哉さん

滞在中、接客を担当した米村一哉さん

対局室となった特別室。窓の外に自然の風景が広がる

対局室となった特別室。窓の外に自然の風景が広がる

童謡詩人の野口雨情もたびたび逗留した老舗旅館。ロビーには茶室も

童謡詩人の野口雨情もたびたび逗留した老舗旅館。ロビーには茶室も

源泉かけ流しの庭園露天風呂「竹林」は混浴。湯浴み着が用意されている

源泉かけ流しの庭園露天風呂「竹林」は混浴。湯浴み着が用意されている

女将の若松さん

女将の若松さん

女将の若松さんが受け取った揮毫色紙は館内に展示されている

女将の若松さんが受け取った揮毫色紙は館内に展示されている

『雨情の宿 新つた』(福島県いわき市常磐湯本町吹谷58)

『雨情の宿 新つた』(福島県いわき市常磐湯本町吹谷58)

関連記事

トピックス

ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン
渡邊渚さん(撮影/藤本和典)
「私にとっての2025年の漢字は『出』です」 渡邊渚さんが綴る「新しい年にチャレンジしたこと」
NEWSポストセブン
ラオスを訪問された愛子さま(写真/共同通信社)
《「水光肌メイク」に絶賛の声》愛子さま「内側から発光しているようなツヤ感」の美肌の秘密 美容関係者は「清潔感・品格・フレッシュさの三拍子がそろった理想の皇族メイク」と分析
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
国宝級イケメンとして女性ファンが多い八木(本人のInstagramより)
「国宝級イケメン」FANTASTICS・八木勇征(28)が“韓国系カリスマギャル”と破局していた 原因となった“価値感の違い”
NEWSポストセブン
実力もファンサービスも超一流
【密着グラフ】新大関・安青錦、冬巡業ではファンサービスも超一流「今は自分がやるべきことをしっかり集中してやりたい」史上最速横綱の偉業に向けて勝負の1年
週刊ポスト
今回公開された資料には若い女性と見られる人物がクリントン氏の肩に手を回している写真などが含まれていた
「君は年を取りすぎている」「マッサージの仕事名目で…」当時16歳の性的虐待の被害者女性が訴え “エプスタインファイル”公開で見える人身売買事件のリアル
NEWSポストセブン
タレントでプロレスラーの上原わかな
「この体型ってプロレス的にはプラスなのかな?」ウエスト58センチ、太もも59センチの上原わかながムチムチボディを肯定できるようになった理由【2023年リングデビュー】
NEWSポストセブン
12月30日『レコード大賞』が放送される(インスタグラムより)
《度重なる限界説》レコード大賞、「大みそか→30日」への放送日移動から20年間踏み留まっている本質的な理由 
NEWSポストセブン
「戦後80年 戦争と子どもたち」を鑑賞された秋篠宮ご夫妻と佳子さま、悠仁さま(2025年12月26日、時事通信フォト)
《天皇ご一家との違いも》秋篠宮ご一家のモノトーンコーデ ストライプ柄ネクタイ&シルバー系アクセ、佳子さまは黒バッグで引き締め
NEWSポストセブン
ハリウッド進出を果たした水野美紀(時事通信フォト)
《バッキバキに仕上がった肉体》女優・水野美紀(51)が血生臭く殴り合う「母親ファイター」熱演し悲願のハリウッドデビュー、娘を同伴し現場で見せた“母の顔” 
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
《六代目山口組の抗争相手が沈黙を破る》神戸山口組、絆會、池田組が2026年も「強硬姿勢」 警察も警戒再強化へ
NEWSポストセブン