「あ、いまはいないんだ」。20年経ってもハッとする
確かに端から見たら家の中はめちゃくちゃだし、「何で離婚しないの」と聞かれることもありましたが、私はまったく気にならなかったですね。「お互いセックスは外でしよう。好きにやったらいいねん」と、らもから“自由恋愛”を提案されたこともありますが、それも特に抵抗はありませんでした。私も彼のほかに好きな人がいたことがあるし、人を好きになるのはしょうがないから、止める必要があるのかと。
私が特別に寛容だったというよりは、お互いに濃厚な恋人時代を過ごした後に家族になったから、そのあとは男も女もなく、気の合う親友として過ごしていて、気にならなかったのかもしれないですね。どこに行こうが何をしようが、必ず元に戻るだろうとふたりとも何となくわかっていたから、らもは好きなことをすればいいし、私のことも邪魔しないでほしいと考えていました。
亡くなってずいぶん経ったいまでも彼の映像や本が山ほど残っているし、一緒に過ごした思い出があるので寂しい気持ちは全然ありません。そもそもらもは仕事でアフリカに行ったり東京に行ったりして長く家を空けていたから、「いなくなった」という感覚がいまだにない。またそのうち会えるだろうと思って毎日を過ごしています。私って、のんきすぎるのかしら?
【プロフィール】
中島美代子さん(72才)/19才で中島らもさんと出会い、結婚後はコピーライターや小説家、ミュージシャン、劇団の立ち上げなど多方面で活躍する夫を支え続けた。
※女性セブン2023年10月12・19日号