中国で光線を照射したUAP
UAPの正体については現在も「エイリアン・クラフト(異星人の乗り物)説」をはじめ「秘密兵器説」や「タイムマシン説」、「自然現象説」など侃々諤々の論争が続いている。冒頭のグルーシュ氏の証言のように、「米当局は宇宙人の存在を知りながら隠蔽している」とセンセーショナルな話題が注目を集めることもあるが、UAP問題に関心を持つのは米国だけではないと前出・竹本氏が指摘する。
「米露やEU諸国はもちろん、中国も膨大なUAP関連データを蓄積しているはず。日本ではあまり伝えられませんが、中国でもUAP事件は頻発しています」
その中でも中国当局を震撼させたのが、98年に河北省滄州市で発生した事件と言われる。現地報道等によると、同年10月19日の午後11時ごろ、同市上空に「飛行と静止を繰り返しながら、地上に光線を照射する」麦わら帽型の飛行物体が出現。中国軍機がスクランブル発進し追跡したが、撃墜寸前で「一瞬のうちに高度1500mから2万mに上昇し飛び去った」というのだ。
事態を重く見た中国当局はこれを機に、通常のスクランブル発進とは別の対UAP専用マニュアルを作成。これまでに収集されたデータは、習近平・国家主席以下ごく限られた幹部にアクセス権を限定し、最高機密として扱われているという。
「月面有人探査や宇宙ステーション計画を推進し、一帯一路構想を宇宙に拡大せんとする中国にとって、UAP問題の解明は国家の最重要課題とも言える。米国に主導権を取られないよう、今後、虚実ないまぜのUAP情報を公表し、米国に揺さぶりをかけることも考えられます」(竹本氏)
米国ではペンタゴンに続き、NASA(米航空宇宙局)もUAP調査への参戦を表明。はたして、現代科学で謎は解明されるのか。グルーシュ氏の証言どおり、米当局は異星人の存在を把握しているのか。
「米当局は『UAPが異星人の乗り物だと考える根拠はない』との立場を一貫していますが、否定していないのも興味深い。もし異星人来訪が事実なら、われわれの価値観は一瞬で崩壊し、国家、社会の秩序は保てなくなるでしょう」(同前)
※週刊ポスト2023年10月20日号