「生活保護適正化ホットラインのポスター[寝屋川市提供]が示すように、暴力団員をやめないと生活保護受給資格はない(時事通信フォト)
「それに、極道映画のようにカッコよく華々しく、若いヤツらの憧れになるようなヤクザも今はいない。高級車に乗り、ブランド物のスーツを着て、高級レストランで食事し、億ションに住むというわかりやすいヤクザは見なくなった。派手にやれば、すぐに警察に目を付けられる。今のヤクザは目立たず地味に生きるしかない。カッコをつけて生きるのがヤクザだが、それができなくなった今、絶滅するのも仕方がない」(組長)
俺もヤクザをやめたい
実際、組長の所もここ数年、若い組員は入ってこないという。「昔は組の名前を使ってシノギができたが、暴排条例などで組の名前は大っぴらには使えない。そうなれば若いヤツらにとっては組に入るメリットがない。今いる組員も同じで、組の名前も代紋も使えない。組も若いヤツらや組員が食っていけるようなシノギを作れない。食べられずに飛んでいく組員もいる」と組長がこぼすように、組の台所事情は苦しいらしい。
「実際、俺もヤクザをやめたい」と組長がサラリと口にした。「本音ではもうやめたいというヤクザは多い。やめたい人間が多いのだから絶滅に向かうのも当然の成行き。自分ももういい歳だし、早く引退したいよ」としみじみ言う。ヤクザとして仲間や若い衆に慕われてきた組長だけに冗談かと思い、「本当に引退なんてする気があるのか」と尋ねてみると、真面目な顔で「何度もあるね」と答え「いい加減、ヤクザをやっていても先がない。苦労が絶えない」。
「やめたいと上に相談したこともあるが、もう少し頑張っていてよ」と引き留められたというのだ。「上にもう少しと言われれば、すぐにはやめられない」という組長に、「やめたらどうやって食べていくのか」と聞くと、「これまでに築いた人脈で稼げなければ、生活保護」と笑った。組をやめカタギになったシニアのほとんどが生活保護に行きつくという。人生の終点は生活保護というのが、絶滅危惧種となったヤクザが直面しているリアルな現状らしい。
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