ロケ現場をキャッチ!内野聖陽と西島秀俊
自宅で食事するシーンの多さに抱く違和感
ドラマ回顧をもう少し。『おっさんずラブ』(テレビ朝日系列・2018年)では、同棲……いや同居中の春田創一(田中圭)と、牧凌太(林遣都)。このふたりのうち、牧がバランスを考えたメニューを提供できる、料理上手だった。
『チェリまほ』こと『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』(テレビ東京系列・2020年)も、安達清(赤楚衛二)に思いを寄せていた黒沢優一(町田啓太)も料理がよくできた。高熱で倒れた安達のために、ささっとお粥を作るシーンも記憶にある。このお粥が二人の恋の着火剤にもなっていた。『僕らの食卓』(BS-TBSほか・2023年)も、同性カップルの食と家族の在り方を描いた。おにぎりの作りかたから始まり、さまざまなメニューを通して、穂積豊(犬飼貴丈)と、上田穣(飯島寛騎)と、その弟、3人の愛が表現されている。いずれにしても料理は立派な出演者。しかも重要ポジションである。
カップルどちらかが料理上手であると、必然的に外食率は減る。これはリアルでもドラマでも、異性愛でも同じだろう。ただ同性愛など性的マイノリティのカップルの場合はそれだけが理由だろうか。「理解がある」「多様性の時代」と、政治家やメディアが連発していても、彼らが好きな時に好きな店に行き外食するなど、大手を振って生活できているのかと考えると、甚だ疑問だ。
そんな連想からドラマにおける“LGBTQ作品”で、やたら自宅で食事をするシーンが多いことに違和感を覚えてしまった。コロナ禍からよく聞かれるようになった「おうちごはん」「おうち居酒屋」といったワードは、あたたかな印象を受けるけれど、果たして誰に対しても共通するイメージなのか。
現実も映像の世界も同じ
2019年に放送された『きのう何食べた?』(第1シーズン)第7話では、こんなシーンがあった。シロさん、ケンジ、小日向大策(山本耕史)、ジルベール航こと井上航(磯村勇斗)の4人が食事をしていたのは、芸能プロダクションで働く小日向が選んだレストラン。店内で食事をする4人以外の客が、全員ゲイだった。
小日向「店こんな感じでよかったですか。勝手に決めちゃいましたけど」
シロさん「いえ、助かりました。こういうとこ、俺よく知らなくて」
冒頭のこの会話の意味がよく分かった。ふつうのレストランでゲイカップルが食事をするのに抵抗があるということだ。会話も聞こえる、些細な仕草も見えてしまう。自分たちがゲイであるとバレてしまうのだ。
続けて第8話で別のゲイカップルとダブルデートのシーン。飲食店へ行くとシロさんは「個室、テーブルが離れた席はないのか」とソワソワする。予感は的中して、周囲の客から白い目で見られることになり、二人は帰り道に喧嘩になってしまうのだった。
ドラマから離れて個人的なエピソードになるが、先日、ひさびさにゲイの友人に会った。彼には10年以上のパートナーがいる。彼らも、ほとんど自宅で食事をしているという。
「男2人で出かけるのはまあ、まだ(周囲にバレる確率が低いので)セーフなんだけど。これが団体になると、個室予約は絶対なんだよね。こう、見た目一発で(ゲイだと)分かっちゃうし、クソデカボイスだし(笑)」