水谷豊(時事通信フォト)

趣里の父・水谷豊(時事通信フォト)

 劇中では、主人公が全ての服を脱ぎながら全力疾走するシーンがある。趣里にとっては初めての一糸まとわぬ姿のシーンとなったが、関根氏にとっても印象的だったという。

「その日はまさかの大寒波で、防寒のコートを着ているスタッフでさえ凍えるような夜でした。にもかかわらず、趣里さんは『私、寒くない』と言い出し、僕らが追いつけないくらいの気迫で感情を発露するシーンを演じきった。彼女の身体能力の高さも感じましたし、細かい動作の表現も美しかった」(同前)

 そして作品が完成し、スタッフや関係者たちだけが集まる最初の試写には、趣里の父である水谷豊の姿もあった。その時のことを関根氏はこう明かす。

「水谷さんが観終わった後に、僕の手をギュッとかなりの圧で握りしめながら『良かった』と言ってくださったんです。僕の前に現れた瞬間には周辺のスタッフもざわつくほどでしたし僕もすごく緊張しましたが、水谷さんは『僕らの若い頃の時代に馴染み深い、前衛的な、アバンギャルドな作品に近い雰囲気を感じた。すごく良かった』と、会場を出るまで手を握りながら感想を述べてくださいました。最高の褒め言葉をいただいたのは嬉しい出来事でしたし、今でも強く残っています。当時は、この作品について『水谷さんが激怒した』といった記事もありましたが、実際は違ったんです」

 同作で趣里は、第42回日本アカデミー賞新人俳優賞などを受賞した。現在放送中の『ブギウギ』も目にしているという関根氏は、作中のヒロインと同じように女優として更なるステップを踏もうとしている趣里についてこう語る。

「さらにスキルを上げているし、芝居の凄みを見せつけてくれているなと感じています。趣里さんは少女のような年齢から30代の年相応の女性も演じられる幅の広い女優ですから、やはり朝のヒロインとして、存在感を放っていますね」

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