スポーツ

「スキャンダルすらリングの上で昇華させた」ターザン山本氏が語るアントニオ猪木さんの凄みと人を弄ぶ言葉の力

1998年4月4日、東京ドームに7万人の大観衆を集めた引退試合後に読み上げた詩の一節。晩年の猪木の代名詞となった(写真=平工幸雄/AFLO)

1998年4月4日、東京ドームに7万人の大観衆を集めた引退試合後に読み上げた詩の一節。晩年のアントニオ猪木さんの代名詞となった(写真=平工幸雄/AFLO)

 亡くなって1年が経つ“燃える闘魂”アントニオ猪木さん(享年79)には、今もなお、人々の心に残る数多くの名言がある。元『週刊プロレス』編集長のターザン山本氏に、猪木はなぜ数多くの名言を遺したのかについて聞いた。

 * * *
 猪木さんは常に世間を驚かせてやろう、爆弾を落としてやろうとして、常識の反対のことしか考えてないんです。そういう思考回路だからインパクトのある言葉が出てくる。アインシュタインが誕生日に写真撮影した際に舌を出したのに通じるセンスというか、人を弄ぶ楽しみを知っている。

『KAMINOGE』(2019年10月発売号)という雑誌でインタビューした時に「詐欺師ほど面白くて夢を与えてくれる人間はいない」と言っていて、印象に残って表紙にも使うことになった。とんでもない発言だけど、猪木さんが言うと別の深い意味があるように聞こえて、許されるから面白い。

 その背景には、「八百長」と言われ続けてきた世間との闘いがある。猪木さんに言わせると「お前ら世間こそ八百長だ」という気持ちがずっとあって、発する言葉の根底には、世間への仕返しという意味もあったと思う。

 印象に残っているのは1983年のこと。当時猪木さんはプロレス以外の事業に資金をつぎ込んで社内で猛反発をくらい、社長の座を追われることになってしまった。そんな時に因縁の相手であるラッシャー木村と闘い、卍固めで勝った試合後に、

「てめぇらいいか、姑息なマネをするな! 片っ端からかかってこい。全部相手にしてやる!」
「俺の首を掻き切ってみろ! 藤波だって、坂口お前もだ!」

 と全方位に吠えまくり、盟友の坂口さんにまで噛みついた。スキャンダルもリングの上で昇華させるえげつなさ、凄みを感じた。

 そういう言葉が咄嗟に出てくるということは、常に自分が発した言葉が世間にどうサプライズとして伝わるかがわかっているんですよ。(談)

※週刊ポスト2023年11月10日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

運転席に座る広末涼子容疑者
《事故後初の肉声》広末涼子、「ご心配をおかけしました」騒動を音声配信で謝罪 主婦業に励む近況伝える
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン
真美子さん着用のピアスを製作したジュエリー工房の経営者が語った「驚きと喜び」
《真美子さん着用で話題》“個性的なピアス”を手がけたLAデザイナーの共同経営者が語った“驚きと興奮”「子どもの頃からドジャースファンで…」【大谷翔平と手繋ぎでレッドカーペット】
NEWSポストセブン
鶴保庸介氏の失言は和歌山選挙区の自民党候補・二階伸康氏にも逆風か
「二階一族を全滅させる戦い」との声も…鶴保庸介氏「運がいいことに能登で地震」発言も攻撃材料になる和歌山選挙区「一族郎党、根こそぎ潰す」戦国時代のような様相に
NEWSポストセブン
山尾志桜里氏に「自民入りもあり得るか」聞いた
【国民民主・公認取り消しの余波】無所属・山尾志桜里氏 自民党の“後追い公認”めぐる記者の直撃に「アプローチはない。応援に来てほしいくらい」
NEWSポストセブン
レッドカーペットを彩った真美子さんのピアス(時事通信)
《価格は6万9300円》真美子さんがレッドカーペットで披露した“個性的なピアス”はLAデザイナーのハンドメイド品! セレクトショップ店員が驚きの声「どこで見つけてくれたのか…」【大谷翔平と手繋ぎ登壇】
NEWSポストセブン
竹内朋香さん(左)と山下市郎容疑者(左写真は飲食店紹介サイトより。現在は削除済み)
《浜松ガールズバー殺人》被害者・竹内朋香さん(27)の夫の慟哭「妻はとばっちりを受けただけ」「常連の客に自分の家族が殺されるなんて思うかよ」
週刊ポスト
サークル活動に精を出す悠仁さま(2025年4月、茨城県つくば市。撮影/JMPA)
《普通の大学生として過ごす等身大の姿》悠仁さまが筑波大キャンパス生活で選んだ“人気ブランドのシューズ”ロゴ入りでも気にせず着用
週刊ポスト
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
遠野なぎこさん(享年45)、3度の離婚を経て苦悩していた“パートナー探し”…それでも出会った「“ママ”でいられる存在」
NEWSポストセブン
レッドカーペットに登壇した大谷夫妻(時事通信フォト)
《産後“ファッション迷子期”を見事クリア》大谷翔平・真美子さん夫妻のレッドカーペットスタイルを専門家激賞「横顔も後ろ姿も流れるように美しいシルエット」【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 石破政権が全国自治体にバラ撒いた2000億円ほか
「週刊ポスト」本日発売! 石破政権が全国自治体にバラ撒いた2000億円ほか
NEWSポストセブン