池田大作氏(時事通信フォト)
一枚岩なわけではない
現在も組織に意見できる風通しの良さは残っているのか。筆者は坂口幾代氏に直撃取材を試みた。
──婦人部が弱くなったことについて聞きたい。
「お話しするような内容はありません。私は総主事という立場で、権限は後任者にいっています」
──婦人部は安保法制に異論があったのでは?
「私たちは絶対平和という立場を一貫して言ってきました。(公明)党の立場が、宗教団体と全部一緒というわけにいかないでしょ。宗教は一人一人の精神性に関わるものですが、現実の政治はお任せしている。あの時、党は北側(一雄)さんが骨を折ってくれました。ぎりぎりのところでした」
──信濃町にデモに来る学会員もいた。
「いろんな人がいます。いなきゃおかしいじゃない。私たちも随分発言しましたし、よくわかった上でのことです。
もちろん、“母の立場”からはどんなことがあろうと戦争は反対。パレスチナで戦争が起きていますが、殺し合うことは絶対にいけない」
続いて2014年の教義改訂を坂口氏が支持したかどうかを問うと、「私たちがOKするとかしないとかはないです」と語った。
──婦人部と執行部の間で緊張関係があったということはないですか。
「いろんな人が自由に意見を言うし、批判もするし、異論を言う。学会は一枚岩だと思っているかもしれないけれど、いろんな人がいるんです」
──大御本尊をめぐる方針で異論は出たんですか。
「あったということは聞いていますけれど、そのことについて確信をもって私の持論はこうだということはちょっと……」
異論を唱えた人はいたのだろうが、それが誰だったかは判然としなかった。その後に坂口氏が「総主事」となった人事の理由については創価学会広報室にも問うたが、「憶測に基づく質問は迷惑です」との答えだった。
──坂口さんは幼少期に入信して、池田氏と一緒に熱っぽく活動されてきたわけですよね。
「学会の歴史そのものを生きてきました」
──女性部は弱くなっていませんか?
「入信動機も変わってきています。若いリーダーも育ってきている。弱いと見るか強いと見るか。一見弱くなったように思うかもしれないけれど、決してそうではない」
新しい創価学会の未来がある、と坂口氏は言った。その言葉は果たして現実となるのだろうか。
(了。前編から読む)
【プロフィール】
広野真嗣(ひろの・しんじ)/1975年、東京都生まれ。慶応義塾大法学部卒。神戸新聞記者、猪瀬直樹事務所スタッフを経て、2015年からフリーに。2017年、『消された信仰』(小学館文庫)で小学館ノンフィクション大賞受賞。
