タイミングが悪いのも岸田首相への欺瞞を強める要因になる。過去には朝令暮改と皮肉られたこともある首相の対応。今回は増税メガネというあだ名が注目されてきた中での所得税減税案だ。あまりのタイミングに、あだ名が気になって仕方がなく、それを払しょくするために減税を行うのではないかという見方まで出た。さらに臨時国会では、減税だけでなく、首相の年収を30万円以上、閣僚は20万円ほど上げるという驚きの法案が出されているという。このような法案が出されていると聞けば、給料は上がらず、物価高に苦しんでいる国民にとっては、1年限りの4万円減税でごまかされている気にもなる。
それにしても増税メガネというあだ名はインパクトが強い。言われてみると、岸田首相になってから増税ばかりされているような気になってくるから不思議だ。外見に基づく差別や偏見をいうルッキズム問題もあるが、首相も「いろいろな呼び方がある」と苦笑いしている場合ではない。
印象という側面からいえば、一般的にメガネは、知的なイメージを与えるといわれてきた。だがビジネスの場面ではメガネのフレームは権力の象徴にもなると、ボディランゲージの世界的権威といわれるピース夫妻が著書『本音は顔に書いてある <言葉の嘘>と<しぐさの本音>の見分け方』(主婦の友社)で書いている。国を率いるリーダーとしての姿が見えてこない首相にとって、最も印象に残るのが権力の象徴でもあるメガネだったということだろう。
誰が名づけたのかわからないが、このままいけば国民の記憶に残る岸田首相の印象は増税メガネだけだったということになりかねない。