芸能

追悼・犬塚弘さん、財津一郎さん 高田文夫氏が振り返る、東西の笑いを届けた日曜夕方の心豊かな時間

犬塚弘さんと財津一郎さんを追悼(イラスト/佐野文二郎)

犬塚弘さんと財津一郎さんを追悼(イラスト/佐野文二郎)

 放送作家、タレント、演芸評論家、そして立川流の「立川藤志楼」として高座にもあがる高田文夫氏が『週刊ポスト』で連載するエッセイ「笑刊ポスト」。今回は、犬塚弘さんと、財津一郎さんについて綴る。

 * * *
「笑芸」を中心とした「芸能界」に住む人間にとって寂しい訃報が東から西から。最後の“クレイジーキャッツ”だった「ワンちゃん」の愛称で親しまれた犬塚弘(94歳)が亡くなった。テレビの普及はクレイジーの大活躍から始まった。ジャズマンからコメディアンへ。

 その「頭のおかしな猫達」は『おとなの漫画』で登場。ついでに青島幸男という天才までが付いてきた。『シャボン玉ホリデー』『スーダラ節』そして「無責任映画」の数々。植木等、谷啓というピカピカのスターコメディアンの横で渋く微笑む忠犬のような犬がいた。猫達の中の犬なのだ。

 本棚を探したら2013年に出版された『最後のクレイジー犬塚弘 ホンダラ一代、ここにあり!』が見つかった。犬塚と共に佐藤利明の著である。よくぞ出版しておいてくれた。感謝である。どんな方でも一冊分の人生は優にあるのだから出しておくもんだ。拙句で「逝く猫や昭和は遠くなりにけり」だ。

 東の犬塚が「静」なら西の財津一郎(89歳)はみごとに体も動き、歌も達者な「動」のコメディアン。あまりにも有名なのは『てなもんや三度笠』に登場した謎すぎる浪人、怪人“蛇口一角”役。刀はペロペロなめるわ、「ヒジョーッにサビシィ~ッ」やら「やめてチョーダイ」など奇声を発する。日曜の夕方6時に放送していた人気コメディ、主演は“あんかけの時次郎”藤田まこと、“珍念”白木みのるである。

 小学校から中学の山の手の小僧達にとって日曜日はとんでもなく心が豊かな時間だった。6時から大阪の30分「てなもんや」、6時30分から東京のアカ抜けた「シャボン玉」。東西の笑いを徹底的に仕込まれて7時からは「隠密剣士」という具合だ。ガキの頃大きくなったら忍者の霧の遁兵衛になろうと本気で思っていた(余談でした)。

 若い人にとっては「ピアノ売ってチョーダイ」のCMがなじみ深いだろう。私は唯一財津さんに詫びなければいけないことがあってあれ程数十年にわたって「ピアノ売ってチョーダイ」と言われていたのに、一台もピアノを売らなかったことである。すいません。

 私が「漫才協会外部理事」になってからナイツの塙会長と開催している「ザ・東京漫才」シリーズも第5弾。“どうする漫協!?漫協幹部緊急会議”と題して12月8日(金)東洋館。前売11月10日発売。私、ナイツ、ロケット団、宮田陽・昇、U字工事の出演。会長、副会長が全員集合。なにが決まるのか。

※週刊ポスト2023年11月17・24日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

今季から選手活動を休止することを発表したカーリング女子の本橋麻里(Xより)
《日本が変わってきてますね》ロコ・ソラーレ本橋麻里氏がSNSで参院選投票を促す理由 講演する機会が増えて…支持政党を「推し」と呼ぶ若者にも見解
NEWSポストセブン
白石隆浩死刑囚
《女性を家に連れ込むのが得意》座間9人殺害・白石死刑囚が明かしていた「金を奪って強引な性行為をしてから殺害」のスリル…あまりにも身勝手な主張【死刑執行】
NEWSポストセブン
失言後に記者会見を開いた自民党の鶴保庸介氏(時事通信フォト)
「運のいいことに…」「卒業証書チラ見せ」…失言や騒動で謝罪した政治家たちの実例に学ぶ“やっちゃいけない謝り方”
NEWSポストセブン
球種構成に明らかな変化が(時事通信フォト)
大谷翔平の前半戦の投球「直球が6割超」で見えた“最強の進化”、しかしメジャーでは“フォーシームが決め球”の選手はおらず、組み立てを試行錯誤している段階か
週刊ポスト
参議院選挙に向けてある動きが起こっている(時事通信フォト)
《“参政党ブーム”で割れる歌舞伎町》「俺は彼らに賭けますよ」(ホスト)vs.「トー横の希望と参政党は真逆の存在」(トー横キッズ)取材で見えた若者のリアルな政治意識とは
NEWSポストセブン
ベビーシッターに加えてチャイルドマインダーの資格も取得(横澤夏子公式インスタグラムより)
芸人・横澤夏子の「婚活」で学んだ“ママの人間関係構築術”「スーパー&パークを話のタネに」「LINE IDは減るもんじゃない」
NEWSポストセブン
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン