長塚夫人に抱えられ、ゴキゲンな愛犬・ココちゃん
「それは言えるかもしれません(笑)。そうしたことにゆったりと時間をとれる。交通渋滞はないし、東京ほど人もいませんから。しょせん身体も頭もひとつだから、いい時間の過ごし方をしたい。あれもこれも手を出して、時間に追われることはない。年も年だし、日常をゆったり楽しく、自分のペースで。そうすることが気持ちいいですね」
軽井沢に足を運ぶようになったのは30年ほど前。軽井沢を選んだのには、何か理由があったのだろうか。
「いえ、特にありません。山か海辺か、と考えました。でも、海辺では家を買うまでに至らず、『縁がないんだな』と。軽井沢はあるときホテルに空きがなく、行きたいときに行けないことがあって、それで家を買おう、ということになりました」
東京を離れる時間が長くなることで、仕事に支障はないのだろうか。
「ないですよ。東京には新幹線で1時間ちょっとで行けますから。以前は車で往復していたんだけど、去年の暮れに免許を返納して車も手放しました。軽井沢でも生活に便利なところで暮らしているから車がなくても大丈夫だし、車をあまり運転しなくなったということもあります。万が一にも他人様(ひとさま)を傷つけてはいけない、という気持ちももちろんありました」
「映画も演劇も若い人のもの」これは映像芸術の宿命
軽井沢では人付き合いをできるだけ絞り、静かな生活を送っている。
「ご近所とはわきまえた付き合いです。お互い距離を保ち、でも何かあったときは知らせ合うような。みなさん、ウチと同じように他所から来ていますから。仕事の打ち合わせで、東京からスタッフが来てくれることもあります。先日も打ち合わせをしながらバーベキューをしたりして(笑)。でも、若いときほど人付き合いが必要なくなります(笑)」
日常の“楽しい雑事”のほかは、映画鑑賞や読書、エッセイ原稿の執筆などで過ごしている。
「映画も本も、選ぶのは古典。映画はBSなどの放送で見ます。本は日本のもの、海外のものをジャンル問わず何でも。大概、何十年も前に読んじゃってるので再読です。いや、誰の、どんな本を読んでいるのかは重要じゃないんです。毎日20~30分、録音しながら音読するんだけど、聞く人がいるかどうかは関係なくて、俳優として楽しみ半分、仕事半分でやっているというか」
“俳優の性”といったところだろうか。
「滑舌を良くしようとか、お腹から声を出そうとか、そういう意図でもない。現世に色気があって、もう一花咲かせたいと思っているわけでは全然ない(笑)。音読することで書いた人の目論見がスーッとみえるので、音読しながら試行錯誤して遊んでいるという感じですか」
テレビはニュースと天気予報ぐらいで、ほとんど見ないと長塚さんは語る。