ライフ

NHK『ラジオ深夜便』が33年続いている理由 コンセプトは「眠くなったらおやすみください」、企画の提案・リサーチ・編集も出演者が担当

放送中の村上里和アンカー。「おっとりとして品のいい話し方が好き」とファンも多い。6時間の長丁場に備え、放送3日前から体調を整えるという。「体力的にはきついですが、とても楽しい」(村上さん)

放送中の村上里和アンカー。「おっとりとして品のいい話し方が好き」とファンも多い。6時間の長丁場に備え、放送3日前から体調を整えるという。「体力的にはきついですが、とても楽しい」(村上さん)

 深夜の約6時間、365日、生放送で全国に発信する『ラジオ深夜便』(NHK)。リスナー数200万人ともいわれ、放送開始から33年を経たいまでもなお、眠れぬ中高年の心を癒し続けている。長い冬の夜を暖めてくれるこの長寿番組が愛される秘密を探りました。【前後編の前編】

 夜中に目覚める、寝つきが悪い……。夜の静寂を悶々と過ごす中高年にやさしく寄り添ってくれるのが、『ラジオ深夜便』(以下、深夜便)だ。

“深夜ラジオ”といえば、若者かトラック運転手向けというのが1980年代までの常識。しかし、その固定観念を覆したのが、1990(平成2)年に始まった中高年向けの同番組で、NHK初の深夜放送だった。

「昭和天皇がご病気の間、ご容態を伝えるとともに静かな音楽を流し続けました。すると、中高年のかたからの反響が大きく、それが番組の立ち上げにつながったと聞いています」と、ディレクターの山田亜樹さんは語る。

 番組の生みの親である制作部長の故・春海一郎さんは、「民放ラジオと真逆の番組を作りたい」と考えたという。それは、

・ゆっくりと話す
・アンカー(番組の進行役)にはOB・OGのアナウンサーを起用する
・流す音楽はクラシックなど静かなものに限定する
・ニュースや地震速報などの情報はすぐに伝える

 というものだ。30年来の愛聴者である80代の男性は、「深夜便の魅力は“アンカーの声”。内容を楽しむ元気がないときも、声を聴くだけで癒されます。特に、初代アンカーの宇田川清江さん(88才)の落ち着いた声は、いまでも鮮明に蘇ります」と振り返る。

「宇田川さんは深夜便を代表する名物アンカー。ゆっくりとした口調で、現在も変わらぬ番組コンセプトである『眠くなったらどうぞおやすみください』と語るスタイルを確立したかたです」(山田さん)

 現在のアンカー陣を見ても、いずれも語りを極めたベテランぞろい。33年間蓄積された重みを感じさせる。

「深夜便では、60代のアンカーですら “ハナタレ小僧”ですから、奥が深いです」と、山田さんは笑う。

ラジオには語り手の人柄が表れる

 毎日の番組構成についてチーフプロデューサーの阪本篤志さんは、次のように語る。

「午後11~深夜0時台は、各界で活躍するかたにライブでお話を伺うコーナーや、社会問題、文化芸術などの教養を深める話題、健康や食などの実用情報をお届けしています。

 1時台のアーカイブ放送を経て、2~3時台は音楽を。『眠くなったらおやすみください』の時間です(生放送)。

 そして4時台は、経験豊富な先輩がたに、人生訓や仕事の流儀を聞くロングインタビュー(収録)。人気ナンバーワンのコーナーです」(阪本さん・以下同)

 このように、夜型の人は前半を、朝型の人は後半を聴くだけでも満足感のある構成になっている。

関連キーワード

関連記事

トピックス

11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(右/読者提供)
【足立区11人死傷】「ドーンという音で3メートル吹き飛んだ」“ブレーキ痕なき事故”の生々しい目撃談、28歳被害女性は「とても、とても親切な人だった」と同居人語る
NEWSポストセブン
愛子さま(写真/共同通信社)
《中国とASEAN諸国との関係に楔を打つ第一歩》愛子さま、初の海外公務「ラオス訪問」に秘められていた外交戦略
週刊ポスト
グラビア界の「きれいなお姉さん」として確固たる地位を固めた斉藤里奈
「グラビアに抵抗あり」でも初挑戦で「現場の熱量に驚愕」 元ミスマガ・斉藤里奈が努力でつかんだ「声のお仕事」
NEWSポストセブン
「アスレジャー」の服装でディズニーワールドを訪れた女性が物議に(時事通信フォト、TikTokより)
《米・ディズニーではトラブルに》公共の場で“タイトなレギンス”を普段使いする女性に賛否…“なぜ局部の形が丸見えな服を着るのか” 米セレブを中心にトレンド化する「アスレジャー」とは
NEWSポストセブン
日本体育大学は2026年正月2日・3日に78年連続78回目の箱根駅伝を走る(写真は2025年正月の復路ゴール。撮影/黒石あみ<小学館>)
箱根駅伝「78年連続」本戦出場を決めた日体大の“黄金期”を支えた名ランナー「大塚正美伝説」〈1〉「ちくしょう」と思った8区の区間記録は15年間破られなかった
週刊ポスト
「高市答弁」に関する大新聞の報じ方に疑問の声が噴出(時事通信フォト)
《消された「認定なら武力行使も」の文字》朝日新聞が高市首相答弁報道を“しれっと修正”疑惑 日中問題の火種になっても訂正記事を出さない姿勢に疑問噴出
週刊ポスト
地元コーヒーイベントで伊東市前市長・田久保真紀氏は何をしていたのか(時事通信フォト)
《シークレットゲストとして登場》伊東市前市長・田久保真紀氏、市長選出馬表明直後に地元コーヒーイベントで「田久保まきオリジナルブレンド」を“手売り”の思惑
週刊ポスト
ラオスへの公式訪問を終えた愛子さま(2025年11月、ラオス。撮影/横田紋子)
《愛子さまがラオスを訪問》熱心なご準備の成果が発揮された、国家主席への“とっさの回答” 自然体で飾らぬ姿は現地の人々の感動を呼んだ 
女性セブン
26日午後、香港の高層集合住宅で火災が発生した(時事通信フォト)
《日本のタワマンは大丈夫か?》香港・高層マンション大規模火災で80人超が死亡、住民からあがっていた「タバコの不始末」懸念する声【日本での発生リスクを専門家が解説】
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「金の無心をする時にのみ連絡」「断ると腕にしがみついて…」山上徹也被告の妹が証言した“母へのリアルな感情”と“家庭への絶望”【安倍元首相銃撃事件・公判】
NEWSポストセブン
被害者の女性と”関係のもつれ”があったのか...
《赤坂ライブハウス殺人未遂》「長男としてのプレッシャーもあったのかも」陸上自衛官・大津陽一郎容疑者の “恵まれた生育環境”、不倫が信じられない「家族仲のよさ」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 習近平をつけ上がらせた「12人の媚中政治家」ほか
「週刊ポスト」本日発売! 習近平をつけ上がらせた「12人の媚中政治家」ほか
NEWSポストセブン