国内

《国際ロマンス詐欺》男女30人から約1.1億円詐取で「懲役10年、罰金200万円」判決 “主犯格”が独占告白「控訴を考えている」

2022年8月、日本に強制送還された森川光被告

2022年8月、日本に強制送還された森川光被告

 SNSで出会った相手に「I love you!」などのメッセージを送り、直接会ったこともない被害者から大金を奪い取る「国際ロマンス詐欺」の被害が急増している。その犯行で約4億円を騙し取ったと報じられたグループの“主犯格”として、ガーナで逮捕された日本人に判決が下された。この事件の取材、傍聴を続けるノンフィクションライターで、『ルポ 国際ロマンス詐欺』の著書がある水谷竹秀氏がレポートする。(文中敬称略)

 * * *

 12月7日午後1時半、大阪地裁第101号法廷。

 ドアが開くと、ジャケットを着たその男がゆっくりした足取りで入ってきた。弁護側の長椅子に腰を下ろし、間もなくして裁判長が現れると、職員から手錠と腰縄を外された。

「被告人は前に来てください」

 裁判長からの呼びかけに、男は証言台の椅子に座った。

「これから判決を言い渡しますが、最後に言っておきたいことはありますか」

 少し間があって、男は口を開いた。

「まあ、裁判とかわかんなかったんで、言い忘れたことは……」

 声が小さすぎて傍聴席まで聞こえないが、特に多くは語らなかった。続けて裁判長から判決が言い渡された。

「主文、被告人を懲役10年及び罰金200万円の刑に処する」

 被告人の男は、西アフリカのガーナを拠点に、国際ロマンス詐欺を繰り返した犯行グループの主犯格とされる森川光被告(60)だ。日本人男女30人から総額1.1億円を騙し取ったとして詐欺罪などに問われ、この日の判決公判を迎えた。グループには森川含め日本人の男が8人、ガーナ人の共犯者も8人ほどいて、ガーナ人の主犯格、ナナ・コフィ・ボアテイン(34)は米国へ逃亡中である。メディアでは「65人から約4億円を詐取」などと報じられたが、証拠不十分などで全てを立件できなかったものとみられる。

 判決の前日、私は大阪拘置所で森川に面会をしていた。判決が言い渡される前の心境を尋ねると、不敵な笑みを浮かべた森川から、こんな言葉が返ってきた。

「そう聞かれると思っていましたよ。はっきり言って何とも思っていません。若い検察官が公判で色々なことを言っていましたけど、こんなガキに俺のガーナでの苦労が分かってたまるかって思いました。気分悪いですね。どうせ良い判決は出やしないから、次に向けて準備をしていこうと。控訴を考えています」

 森川がガーナの首都アクラで逮捕され、日本に強制送還されたのは昨年8月上旬。以来、私は何度か面会を申請したが、共犯者がいたために接見禁止状態が続いていた。それがようやく解除され、面会が初めて実現したのは今年5月半ばのことだった。

 以来、今回で18回目の面会となり、受け取った手紙は16通に上る。それらのやり取りから、国際ロマンス詐欺の関与に至るまでの森川の半生が浮かび上がってきた。

関連記事

トピックス

まだ重要な問題が残されている(中居正広氏/時事通信フォト)
中居正広氏と被害女性Aさんの“事案後のメール”に「フジ幹部B氏」が繰り返し登場する動かぬ証拠 「業務の延長線上」だったのか、残された最後の問題
週刊ポスト
生徒のスマホ使用を注意しても……(写真提供/イメージマート)
《教員の性犯罪事件続発》過去に教員による盗撮事件あった高校で「教員への態度が明らかに変わった」 スマホ使用の注意に生徒から「先生、盗撮しないで」
NEWSポストセブン
(写真/イメージマート)
《ロマンス詐欺だけじゃない》減らない“セレブ詐欺”、ターゲットは独り身の年配男性 セレブ女性と会って“いい思い”をして5万円もらえるが…性的欲求を利用した驚くべき手口 
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《ブログが主な収入源…》女優・遠野なぎこ、レギュラー番組“全滅”で悩んでいた「金銭苦」、1週間前に公表した「診断結果」「薬の処方」
NEWSポストセブン
京都祇園で横行するYouTuberによる“ビジネス”とは(左/YouTubeより、右/時事通信フォト)
《芸舞妓を自宅前までつきまとって動画を回して…》京都祇園で横行するYouTuberによる“ビジネス”「防犯ブザーを携帯する人も」複数の被害報告
NEWSポストセブン
由莉は愛子さまの自然体の笑顔を引き出していた(2021年11月、東京・千代田区/宮内庁提供)
愛子さま、愛犬「由莉」との別れ 7才から連れ添った“妹のような存在は登校困難時の良きサポート役、セラピー犬として小児病棟でも活動
女性セブン
インフルエンサーのアニー・ナイト(Instagramより)
海外の20代女性インフルエンサー「6時間で583人の男性と関係を持つ」企画で8600万円ゲット…ついに夢のマイホームを購入
NEWSポストセブン
ホストクラブや風俗店、飲食店のネオン看板がひしめく新宿歌舞伎町(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」のもとにやって来た相談者は「女風」のセラピスト》3か月でホストを諦めた男性に声を掛けた「紫色の靴を履いた男」
NEWSポストセブン
『帰れマンデー presents 全国大衆食堂グランプリ 豪華2時間SP』が月曜ではなく日曜に放送される(番組公式HPより)
番組表に異変?『帰れマンデー』『どうなの会』『バス旅』…曜日をまたいで“越境放送”が相次ぐ背景 
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《自宅から遺体見つかる》遠野なぎこ、近隣住民が明かす「部屋からなんとも言えない臭いが…」ヘルパーの訪問がきっかけで発見
NEWSポストセブン
2014年に結婚した2人(左・時事通信フォト)
《仲間由紀恵「妊活中の不倫報道」乗り越えた8年》双子の母となった妻の手料理に夫・田中哲司は“幸せ太り”、「子どもたちがうるさくてすみません」の家族旅行
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(左/Xより)
《大学時代は自由奔放》学歴詐称疑惑の田久保市長、地元住民が語る素顔「裏表がなくて、ひょうきんな方」「お母さんは『自由気ままな放蕩娘』と…」
NEWSポストセブン