「5000万以上いただいてるおぢ」との証拠LINE
検察が繰り返す、ウソ、ウソ、虚偽
13時50分、名古屋地裁第二法廷で公判が始まった。法廷に入るとすでに渡辺被告は被告人席の前に立っており、綿密なボディーチェックを受けていた。数々の動画に出演していた、キレイに整えられたセミロングのアッシュブロンドに華やかなメイクを施した「りりちゃん」の姿はそこにはなく、背中まで伸びた髪の毛は黒い地毛が頭の半分以上を覆い、長く伸びた前髪をセンター分けにしている。
透明の太ブチ眼鏡に、黒っぽいスウェットの上下を着用しており、かなり小柄な印象で動画に登場していた頃からはずいぶん、痩せてしまったように見えた。
今回の審理の内容は4月から8月にかけて、マッチングアプリで知り合った茨城県の50代の男性から約3850万円をだまし取った詐欺について。裁判長から名前を聞かれた渡辺被告が「渡辺真衣です」と蚊の鳴くようなか細い声で返答し、審理が始まった。
誕生日や本籍地をひととおり答えた後に、
──住所は
「ないです」
──職業は
「ないです」
と現在、無職で住む家もないことをぎりぎり聞き取れるほどの小さな声で明かす。
その後検察による冒頭陳述により、【1】自分に好意を抱いている男性N(※公判では実名)に『親子仲が悪く、縁を切りたいが、そのためには養育費として800万円を渡さなければいけない』とウソをつき自身の口座に現金を振り込ませたこと。【2】『池田』なる人物に2300万円の借金があり、それを返せばNと同棲することができる、と、同居の意思はないのに2680万円と、さらに追加で160万円を振り込ませたこと。しかし『池田』は存在せず、架空の人物だったこと。【3】携帯電話料金を滞納しており、使用できるようにするために現金を振り込んで欲しいとウソをいい、11万円を振り込ませたこと。【4】6月1日から7月21日の間に、Nに『600万円の借金がある。それを返せばNと暮らせる』と同居するつもりもないのにアプリのメッセージと通話機能で連絡をし、現金317万円を振り込ませたこと【5】同年8月4日、携帯料金を滞納したというウソをついてNに対し『携帯が使えなくなる』と2万円を振り込ませた──と事件の詳細が明かされた。
静まりかえった法廷内で、検察が矢継ぎ早に繰り返す、ウソ、ウソ、虚偽、という言葉だけが響く。
裁判長から「この事実について審議を行います。公訴事実に何か違った点はありますか?」と聞かれると、渡辺被告は、「見当たりません」と答える。裁判長から重ねて「全部あっていますか?」と問われると、「はい」と今にも消え入りそうな様子で、罪を認めた。
うなだれる渡辺被告をよそに、検察は証拠を挙げながらこう続ける。
「被告人はだまし取った金銭でホストクラブに通いつめるようになった。被害者は金銭問題が解決すれば同居、結婚もしたいと思っていた。被告人はウソの借用書を見せ、池田という架空の人物がいるかのように見せた」