証拠として上がったのは、N氏による被害届とそれについての供述書だ。
《被害者とは令和5年4月にマッチングアプリで知り合った。その後直接会うようになり、被告人が好意を持っていると思い、金銭トラブルを抱えていると悩んでいた。4月29日には【1】の件で親に払う養育費として200万円を振り込んだ》
《「5月1日には、架空の人物「池田」に2714万円の借金がある、返せないと風俗で働かされると虚偽の言動をし、Nは5月22日に生命保険を全部解約し、まず2680万円、そののちに36万を振り込んだ。6月22日、7月18日にも「池田への借金が残っている」と携帯アプリで何度も何度も連絡し317万円を振りこませた》
加えて、通信記録や被害者からの送金歴、振込履歴などと共に渡辺被告のXアカウントにアップされた「頂き女子りりちゃん」としての投稿も「証拠」として取り上げられた。
「5月1日。そこには“計5000万以上いただいてるおぢとのLINE”として被害者とのやりとりのスクリーンショットをあげている。
5月4日には別の男性とのスクショを掲載。『金にはまったく興味ありませんおぢの存在が大事だよってたくさん肯定します』と詐欺を示唆するような内容もあった。また同月23日、被害者から2000万円以上を受け取ったその日には『わたしにいままで何千万って渡してくれているじじい。でも絶対じじいに対してわたしが『ごめんね』なんて、わたしの心殺してしまうようなこと一生涯わたし思わないように』と書いている」
「詐欺が意図的だった証左」として検察官の男性が「りりちゃん節」のツイートを早口で読み上げると傍聴席は一瞬ざわついたものの、渡辺被告はうつむくばかりでその表情はようとしてしれない。そして最後に、渡辺被告の供述内容が読み上げられた。
「『頂き女子』として活動していたがいきづまり、マッチングアプリを使うようになった。被害者には『親と不仲になった』『金銭的な問題を抱えている』とウソをついた。携帯を滞納しているという事実はない。『池田』も架空の人物。“彼女”のようにふるまって、同居も結婚もするつもりはないのに、そのようなフリをした。新宿・歌舞伎町のホストクラブにのめりこんで、一回の来店で900万円から数千万円を支払った。担当ホストを一番にすることに生きる価値や意味があると感じていた。振り込まれたお金はすべて自分で引き出して、ほぼすべてを歌舞伎町のホストクラブで使い果たした」
時々髪の毛を掻き上げるようなしぐさをする以外は、背中を丸めるようにして座り、終始、うつむいていた渡辺被告。その姿に「頂き女子」として君臨し、歌舞伎町女子のカリスマとなった「りりちゃん」のオーラはなかった。
渡辺被告がすべてを費やした“担当”は、「だまし取った金だと知りながら渡辺被告に飲食代として4000万円貢がせた」という罪で異例の逮捕をされている。(※その後覚せい剤所持の容疑で12月5日に再逮捕)。全国紙社会部記者によると、渡辺被告は現在、弁護士以外との誰との接見にも応じていないという。留置所で、ひとり編まれる彼女の「物語」はどこへとつながっていくのだろうか。
次回の公判は2024年2月16日、名古屋地裁で開かれる。