岸田首相の選挙運動費用収支報告書
このカネは、どう扱われるのか。
国税庁課税部個人課税課の担当者が説明する。
「議員本人が選挙運動に使うために寄せられた寄附収入などは、選挙管理委員会に報告がなされている場合、所得税も贈与税も非課税になります。基本的にはすべて選挙活動に使われるのが一般的だと考えますが、残余金が出た場合は使い方にかかわらず非課税の個人所得となります。確定申告の必要はありません」
残余金は「非課税の個人所得」すなわち首相のポケットマネーになったのだ。
違法の安倍派、脱法の岸田
このカラクリを使うと、政治家は選挙のたびに“裏金”をつくることができる。
選挙の際に、政党支部から政党交付金(税金)を自分自身に寄附し、選挙費用を余らせて「非課税の個人所得」にする。税務申告の必要がなく、何にでも自由に使える金が生まれる。政界で「選挙資金ロンダリング」と呼ばれる手法だ。
自民党派閥の裏金問題を刑事告発するなど、「政治とカネ」を追及し続けてきた上脇博之・神戸学院大学教授が指摘する。
「選挙の収支で出た残余金が非課税の個人所得になるというのは、“法の抜け道”です。それを利用して政治家は選挙のために集めた寄附を持ち逃げできる。ましてや岸田首相のようにその原資が政党支部の政党交付金なら、税金を含む選挙費用の残余金を個人のものにしたということになる。その残余金を選挙や政治に使っていれば、まさに裏金そのものです」
岸田首相は残余金を何に使ったのか。
それを問う前に、残余金をキチンと政党支部に返した政治家のケースを見てみよう。
河野太郎・デジタル相は前回総選挙時に政党支部からの約201万円の寄附と支援者などからの陣中見舞いで総額約811万円の選挙資金を用意し、支部から出した金額以上の約234万円の残余金があったが、「選挙の残余金はその年の12月に河野太郎本人からの寄附として全額政党支部に返しています」(事務所回答)と説明する。