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【追悼・大橋純子さん】「歌があるから元気でいられる。お互い頑張りましょうね」乳がんを患った麻倉未稀にかけた言葉

2016年にBillboard Live大阪で行われたライブで熱唱する大橋さん

2016年にBillboard Live大阪で行われたライブで熱唱する大橋さん

『シルエット・ロマンス』などのヒット曲で知られる歌手の大橋純子さんが亡くなったのは2023年11月9日、73才だった。2018年3月に食道がんを公表し、2023年3月に再発して療養中のことだった。

「2023年は本当にたくさんのかたが亡くなってしまって……。純子さんまで逝かれるなんて、本当にショックです」と、歌手の麻倉未稀(63才)は顔をくもらせる。

『THE夜もヒッパレ』1995〜2002年、日本テレビ系)などの音楽番組で共演した大橋さんは、歌手を目指してレッスンを受けていた麻倉にとって、高校生の頃からの憧れの歌手だったという。

「初めてお仕事でご一緒したのは、“ヒッパレ”でした。当時は大橋純子さん、庄野真代さん(68才)、渡辺真知子さん(67才)という、アイドルとは違う大人の歌手がたくさんいて、私の目標でした。純子さんの迫力ある歌声はレコードで何度も聴いていたのですが、“本物”の歌声は大迫力! それから番組でちょこちょこご一緒させていただくようになり、純子さん、庄野さん、真知子さんたちの後を、金魚のフンのようについていっていたんです」(麻倉・以下同)

 大橋さんの歌唱力を再認識したのは、2008年8月、鎌倉・鶴岡八幡宮での『鎌倉音楽祭』を見に行ったときのことだ。

「友人に誘われ、一般の観客として行ったんです。純子さんはとても小柄ですが、ステージに立つとすごく大きく見える。そして空気がガラッと変わるんです。歌い出すと、さらにそのパワーが伝わってくる。ほかにもたくさんのアーティストが出ていらしたんですが、空気感がまったく違う、本当に別格だと思いました。

 同じステージに立ち、舞台袖から見ていたときとはまた違う、客席から感じられるオーラに圧倒されたんです」

 麻倉は2017年に乳がんを、大橋さんは2018年に食道がんを公表しているが、当時こんなエピソードがあったという。

「2018年に年末の番組でご一緒する機会がありました。リハーサルのときにステージの袖でご挨拶をすると、『未稀ちゃん、大丈夫?』と声をかけてくださいました。病気のことをあまり話したくないかたもいらっしゃるので、お聞きするのを控えていましたが、お話を振ってくださったので、『純子さんはいかがですか?』とお聞きすると、年明けに抗がん剤治療の最終クールを受けるとのこと。私が『乳がんは経過観察が10年もあるから精神的にコントロールするのが大変』とこぼすと、『つらいことがあっても、歌があるから元気でいられる。お互いに頑張りましょうね』と励ましてくださいました。

 純子さんはいつも、『頑張ってね』ではなく、『頑張りましょうね』と。私を仲間に入れてくださっているようで、とてもうれしかった」

 その後、舞台袖から聴いた『シルエット・ロマンス』は抗がん剤治療中だったからか、ちょっとかすれた声で、いつもとは違っていたが、体の内側からにじみ出るような歌声は、心に染み、涙があふれそうだったという。

「再発されたと聞き、心配していましたが、またすぐ復帰されるだろうと思っていたんですが……。もっと歌声を聴いていたかった。お通夜の日は京都でライブがあったので、曲目を変更して『シルエット・ロマンス』を歌わせていただきました。私なりのメッセージが届けばいいなと思って。

 純子さんの歌に対する真摯な姿勢と、そこにいるだけで優しさが感じられるたたずまいは真似したいですし、引き継いでいきたいと思っています。楽屋での純子さんは本当に優しさに満ちあふれていてステージでのパワフルな印象とは真逆。このギャップを知っているのは、歌手仲間だった私たちの特権です」

歌手の麻倉未稀

歌手の麻倉未稀

【プロフィール】
麻倉未稀/確かな歌唱力でポップスにとどまらずジャズ、ラテン、クラシックに至るまで幅広く歌いこなす。2022年7月にデビュー40周年記念アルバム『人生はドラマ〜これからも続く私のヒーロー物語〜』をリリース。

取材・文/山下和恵

※女性セブン2024年1月4・11日号

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