傷つけられたプライド

指名手配された前谷容疑者(時事通信フォト)

指名手配された前谷容疑者(時事通信フォト)

 今回の事件後、暴力団間で「犯行の原因」とされる動画が出回った。2022年10月に開催された伊予三島秋祭り会場の喧嘩を撮影したもので、特徴的な法被が映っており、喧嘩のあった場所を特定した。

 そこは伊予三島駅近くの古い商店街だった。聞き込みを行なうと、住民たちのすべてが2年前にあった前谷容疑者と石川氏の喧嘩を認知していた。

「太鼓台いうてね。他の祭りだと山車だけど、2人の喧嘩があったせいで進路が変えられた。だからこの辺の人はみんな覚えとるよ」(前出・飲食店経営者)

 2020年の5月、前谷容疑者は岡山市内の池田組事務所前の駐車場で、六代目山口組のヒットマンに銃撃され重傷を負っていた。山口組側の石川氏は自らの立ち位置を考え、その追い討ちをしようと思ったのかもしれない。祭りの関係者は匿名を条件にこう解説した。

「石川さんは他の地域で自治会が認めていない個人の太鼓台を持ち、関係者を集めて祭りに出ている。こっちの祭りに暴れにきたのは警察も分かってて、たくさん警官がいてビデオも録ってた。前谷さんを狙ったみたいだけど、たいした怪我はなかったね」

 実際は積もり積もった不満が爆発して殺害に至ったはずである。だがヤクザの親分が、地元の祭りでかつての身内に襲われた。衆人環視の中のトラブルは、前谷容疑者のメンツをいたく傷つけただろう。

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