ライフ

【新刊】「夫と一緒の墓に入りたくない」の遺言から発展する“墓小説” 垣谷美雨『墓じまいラプソディ』など4冊

お墓をめぐるコミカル情報小説。ちょっと未来形のラストも気分がいい

お墓をめぐるコミカル情報小説。ちょっと未来形のラストも気分がいい

 厳しく冷え込むこの季節。休日には暖かい部屋で読書でもしてみては? おすすめの新刊を紹介する。

『墓じまいラプソディ』/垣谷美雨/朝日新聞出版/1760円
 垣谷さん絶好調。先祖伝来の墓に伝統と家長の誇りを感じてきた人々に、妻、娘、女きょうだいらが懐柔と説得と異なる視点の嵐を浴びせる。発端は五月の義母が「夫と一緒の墓に入りたくない。樹木葬にして」と遺言して亡くなったこと。五月の娘達の結婚の“壁”(選択的夫婦別姓)も絡む。著者の技は“思い込みの典型”をユーモラスな浅慮として描くこと。笑ってスッキリ!

歌人が365日眺めた朝の空。詩に昇華するコトノハの豊かさ

歌人が365日眺めた朝の空。詩に昇華するコトノハの豊かさ

『朝、空が見えます』/東直子/ナナロク社/1870円
「ヌクミズは空が好きね」と友人に指摘され初めて気づいた。そういえば10代のころ勉強部屋から空ばかり見てた。歌人で小説家の著者による初の詩集。空というたった一つの対象物なのに“日本語ってこんなに豊かなんだ”と驚く。1月「きいんと白い寒天」、2月「海の底の砂のような空」、3月「ミルクと蜂蜜入りの青空」、4月「こっくりと白い空」。空ってやっぱり希望だと思う。

さる1月18日に喜寿を迎えた著者。週刊ポストの人気連載が新書に

さる1月18日に喜寿を迎えた著者。週刊ポストの人気連載が新書に

『ニッポンが壊れる』/ビートたけし/小学館新書/1034円
 安倍氏銃撃事件以来、不都合な真実が次々と白日の下に。一芸能事務所に支配されたテレビ界、偽装と不正の経済界、裏金作りに励んだ政界。この惨状にもの申すが、自分の毒舌は子供が「王様は裸だ!」と叫ぶ精神が原点とか。半グレの闇、マイナカードの愚策、スマホは現代の「年貢だ」と。坂本龍一など故人を偲び、大谷翔平と藤井聡太に構造そのものを変える人格の力を見る。

『犬がいた季節』/伊吹有喜/双葉文庫/880円
 天皇のご病状で自粛が続いた昭和の終わり、三重県四日市市の進学校、通称「ハチコウ」に白い迷い犬が現れる。早瀬光司郎の席にちょこんと陣取ったので「コーシロー」と呼ばれるようになったその犬は、新陳代謝を続けるハチコウ高3の生徒達の姿を見つめ続ける。話者の違う短編が繋がり昭和〜平成〜令和元年までを描く大河小説で、10代の挫折や断念までもが瑞々しく眩しい。

文/温水ゆかり

※女性セブン2024年2月8日号

トピックス

大谷と真美子夫人の出勤ルーティンとは
《真美子さんとの出勤ルーティン》大谷翔平が「10万円前後のセレブ向けベビーカー」を押して球場入りする理由【愛娘とともにリラックス】
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる(秋田県上小阿仁村の住居で発見されたクマのおぞましい足跡「全自動さじなげ委員会」提供/PIXTA)
「飼い犬もズタズタに」「車に爪あとがベタベタと…」空腹グマがまたも殺人、遺体から浮かび上がった“激しい殺意”と数日前の“事故の前兆”《岩手県・クマ被害》
NEWSポストセブン
「秋の園遊会」でペールブルーを選ばれた皇后雅子さま(2025年10月28日、撮影/JMPA)
《洋装スタイルで魅せた》皇后雅子さま、秋の園遊会でペールブルーのセットアップをお召しに 寒色でもくすみカラーで秋らしさを感じさせるコーデ
NEWSポストセブン
チャリティーバザーを訪問された秋篠宮家・次女の佳子さま(2025年10月28日、撮影/JMPA)
《4年会えていない姉への思いも?》佳子さま、8年前に小室眞子さんが着用した“お下がり”ワンピで登場 民族衣装のようなデザインにパールをプラスしてエレガントに
NEWSポストセブン
11歳年上の交際相手に殺害されたとされるチャンタール・バダルさん(21)。千葉のビジネス専門学校へ入学しようと考えていたという
「『彼女がめっちゃ泣いていた』と相談を…」“背が低くておとなしい”浅香真美容疑者(32)と“ハンサムな弟”バダルさん(21)の「破局トラブル」とは《刺されたネパール人の兄が証言》
約2時間30分のインタビューで語り尽くした西岡さん
フジテレビ倍率2500倍、マンション購入6.2億円…異色の経歴を持つ元アナ西岡孝洋が明かす「フジテレビの看板を下ろしたかった」本当のワケ
NEWSポストセブン
11歳年上の交際相手に殺害されたとされるチャンタール・バダルさん(21)。アルバイトをしながら日本語を学んでいた
「ホテルで胸を…」11歳年上の交際相手女性・浅香真美容疑者(32)に殺害されたバダルさん(21)の“魅力的な素顔”を兄が告白【千葉・ネパール人殺害】
佳子さまの“着帽なし”の装いが物議を醸している(写真/共同通信社)
「マナーとして大丈夫なのか」と心配の声も…佳子さま“脱帽ファッション”に込められた「姉の眞子さんから受け継ぐ」日本の伝統文化への思い
週刊ポスト
医師がおすすめ!ウイルスなどの感染症対策に大切なこととは…?(写真はイメージです)
感染予防の新常識は「のどを制するものが冬を制する」 風邪の季節に注意すべき“のど乾燥スパイラル”とは?
NEWSポストセブン
「秋の園遊会」に出席された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年10月28日、撮影/JMPA)
《秋の園遊会》 赤色&花の飾りで“仲良し”コーデ 愛子さまは上品なきれいめスタイル、佳子さまはガーリーなデザイン
NEWSポストセブン
真美子さんが“奥様会”の写真に登場するたびに話題に(Instagram /時事通信フォト)
《ピチピチTシャツをデニムジャケットで覆って》大谷翔平の妻・真美子さん「奥様会」での活動を支える“元モデル先輩ママ” 横並びで笑顔を見せて
NEWSポストセブン
クマによる被害が相次いでいる(左・イメージマート)
《男女4人死傷の“秋田殺人グマ”》被害者には「顔に大きく爪で抉られた痕跡」、「クラクションを鳴らしたら軽トラに突進」目撃者男性を襲った恐怖の一幕
NEWSポストセブン