京王電鉄といえば沿線にサンリオピューロランドがあることでも知られるが地方の高校生は知らないことも。「ハローキティ」などの人気キャラクターがフルラッピングされた京王電鉄の9000系電車。「(c)2018 SANRIO CO.,LTD.」(時事通信フォト)

京王電鉄といえば沿線にサンリオピューロランドがあることでも知られるが地方の高校生は知らないことも。「ハローキティ」などの人気キャラクターがフルラッピングされた京王電鉄の9000系電車。「(c)2018 SANRIO CO.,LTD.」(時事通信フォト)

東北や九州の高卒者採用を強化する京王電鉄

 鉄道事業者が運転士を確保するために手をつけなければならないのは、なによりも鉄道員の処遇改善だろう。実は、そうした処遇改善が必要なことは鉄道事業者も理解している。しかし、コロナ禍で大幅な赤字を出し、今後も少子化などで需要増の見通しが立たない。そんな苦境の中で、処遇改善などと言い出すことはできない。下手に言い出せば、経営を逼迫させて会社そのものが立ち行かなくなる。処遇改善は、鉄道事業者にとってパンドラの箱なのだ。

 そうした中、京王電鉄は福利厚生面に力を入れることで新入社員の採用を強化している。

「弊社は沿線の東京都府中市や神奈川県川崎市・相模原市に独身寮を保有しています。これらの独身寮の間取りは1Kですが、2023年12月から無償化しました。併設している駐車場も、自己負担が発生しますが利用できます」と話すのは、京王電鉄広報部の担当者だ。

 1Kとはいえ、東京近郊でアパートを借りれば月5万円はかかるだろう。それらの家賃負担がなくなることは、新入社員にとって経済的にも大きなメリットになる。

 これまで京王は、自社沿線を中心に高卒新卒者を採用していた。少子化によって新卒者自体が減少し採用が思うようにいかなくなる。そこで福利厚生の充実を図り、地方の高校生、特に東北や九州の採用に力を入れるようになった。独身寮の無償化は、その一環でもある。

「独身寮には管理人が常駐しており、地方から上京して初めて一人暮らしを始める社員も安心して生活できる環境を提供しています」(京王電鉄広報部)という。

 京王電鉄は新宿駅を起点に京王八王子駅を結ぶ本線格となる京王線のほか、渋谷駅―吉祥寺駅を結ぶ井の頭線、ハイキングなどで行楽客が多く利用する高尾山口駅のある高尾線などがあり、東京圏では知名度が高い。

 しかし、採用担当者が力を入れていると口にした東北や九州に京王の電車は走っていない。そのため、東北や九州での知名度は決して高くない。以前に東京近郊に住んでいたとか、相当な鉄道ファンでなければ京王の名前を知っている高校生は少ないだろう。京王の新卒採用の求人を目にしても、鉄道会社と認識できないかもしれない。

 そうした懸念から、京王は東北や九州での採用を強化するにあたって東北や九州でもテレビCMなどを放送して知名度アップを図る取り組み進めている。さらに、帰省費用を年度内に2往復分まで支給する制度も開始した。

「帰省にかかる航空券料金、鉄道およびバスの乗車運賃および特急料金を補助します。なお、帰省にかかった費用のうち、1往復当たり2000円を超える部分を会社負担としています。会社負担の上限は、1往復あたり3万円です。これら帰省費用は、当該年度内に2往復分まで補助します」(同)

 地方の高校を卒業した新入社員を採用するにあたり、こうした福利厚生の充実は訴求力を持つだろう。

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