「壊してやろうみたいな気持ちはないんです」(高野さん)

「壊してやろうみたいな気持ちはないんです」(高野さん)

掟破りな脚本になった背景

『キングオージャー』は、それまで当たり前にあった巨大ロボの戦闘がない回があったり、1人しか変身しない回があったりと、スーパー戦隊のフォーマットを崩している部分もある。

「僕一人の一存でそうなったわけではありません。戦隊にあまり触れてこなかったからこそ、壊してやろうみたいな気持ちはないんです。やっぱり同じことをやっていては立ち行かなくなっている状態なんですよ。

 少子化が進んで人口も減っているということは、ファンの厚みがただ減っているってことです。特撮はとてもリッチな番組なので、ファン層を広げなければ、もう放送自体ができなくなってしまう。時代に合わせ、ファンを広げるための試行錯誤で進化と革新をしてきたのが、スーパー戦隊やライダーが長年続いてきた理由だと思います」

「スーパー戦隊」シリーズは歴史が長い。その中で“新しい”ことをやろうとするのは、傍から見ると難しいのではないかと感じる。

「ロボット戦を担当している特撮監督の佛田洋さんは、この道35年以上の大ベテランなんですけど、こちらがアイデアを出しても『もう、全部やっちゃっているんだよねえ』ってニコニコしてるんですよ。『新しい人が来るとね、これは新しいだろうって思って(アイデアを)出してくれるんだよ。でも、あ、それは◯◯でやった、それは××でやったって言うと、段々声が小さくなるんだよね』って(笑)。

 佛田さんに限らず、全員が“飽きている”んです。だから逆に新しいものを作りたいと思っているんですよ。歴史があるものだから、逆にルーティーンのように作っている人は誰もいなくて、『これは前にやったな』『じゃあ、こうするか』とかブツブツ言いながら考えている。

 飽きているからこそ妥協しない。マンネリしやすいからこそ新しいものを生み出すという姿勢が、新鮮ですごく刺激になりましたね。どんどんアイデアを加えていって、少しでも面白くしようっていう、こんなにモチベーションが高い現場なかなかないですよ(笑)」

 熱烈な『キングオージャー』ファンが多い中、誰よりも『キングオージャー』ファンを公言しているのが高野水登自身だ。

「僕の中での『キングオージャー』の唯一の欠点は僕が脚本を書いていることなんですよ(笑)。書いているせいで、内容を全部知っているから。本当は知らないで見たかった!

 毎回、必ず自分の想像を超えたものが出てくる。監督一人ひとり個性があって撮り方も違うから、本当にバリエーションに富んでいて毎回新鮮に面白い。そういう人たちと一緒に作っていくのがすごく楽しかったですね」

後編に続く)

【プロフィール】高野水登(たかの・みなと)/脚本家。1993年生まれ。主な担当作品は『真犯人フラグ』(日本テレビ)、『TIGER&BUNNY2』(Netflix)、『映像研には手を出すな!』(MBS・TBS)、『賭ケグルイ』(MBS・TBS)、『仮面ライダーゼロワン』(テレビ朝日)など。

◆取材・文 てれびのスキマ/1978年生まれ。ライター。戸部田誠の名義での著書に『1989年のテレビっ子』(双葉社)、『タモリ学』(イーストプレス)、『芸能界誕生』(新潮新書)、『史上最大の木曜日 クイズっ子たちの青春記1980-1989』(双葉社)など。

撮影/槇野翔太

『王様戦隊キングオージャー』の最終回は 2月25日(日)午前9:30から(テレビ朝日系)にて放送

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