首都圏では「中学受験」が活況を呈している(AC)

首都圏では「中学受験」が活況を呈している(AC)

これから受験を迎える保護者は

 これから受験を向かえる保護者には、わが子に合った、楽しく6年間通える学校かどうかを考えてリサーチし、偏差値の幅を持たせた志望校選びをしていただきたい。偏差値が高ければ良い学校、というわけではありません。第1志望に合格しなくても、後に「落ちて、今通っている学校になって良かった」という子もたくさんいます。魅力的な学校はたくさんありますから、よく探してほしいと思います。

 わが子に中学受験をさせようかどうか迷っている保護者には、「周りがしているから」ではなく、中学受験をさせる意味を熟考して決めていただきたいですね。たとえば中高一貫校では6年、10年と一緒に過ごす学友を得て生涯の友を見つけやすい環境や、部活や趣味に専念できる環境などを得られます。しかし、受験を選択することで、5、6年生になると塾中心の生活になり、友だちとの遊びや趣味、習い事にかける時間を削って勉強に励まなければならないのです。どちらの道が正しい、とか間違っている、ということはありません。

 わが子に中学受験をさせるのに向かない保護者もいるでしょう。自分は勉強が嫌いなのに、わが子には勉強をさせよう、という保護者です。“勉強はイヤイヤやらされるもの”“苦しいもの”と思っているのに、わが子に強いるので、わが子も勉強が嫌いになってしまいます。そういう保護者ほど、子にぴったりくっついてわが子の勉強をみてしまいがちです。

 私も子どもが2人いて、2人とも中学受験を経験しましたが、実の親子となるとお互い冷静にはなれないものです。私もわが子の受験に関しては、専門の先生に託していました。わが子でも冷静になれる保護者は功を奏すると思いますが、そういう保護者は限られていると思います。

 中学受験は、主役はわが子。保護者は脇役。合格するために一生懸命勉強する、というシンプルな世界です。保護者は熱くなりすぎず子の健康管理に徹し、わが子の様子をよく観察してください。気になることや叱りたいことがあったら、第三者である塾講師などに相談を。第三者とコミュニケーションをとりながら、受験に向かっていただけたらと思います。子どもは第三者の言うことはとても素直に聞くものです。上手に利用していただきたいですね。

【プロフィール】矢野耕平(やの・こうへい)/1973年、東京生まれ。中学受験指導「スタジオキャンパス」代表。大手塾に13年間勤務したのち、2007年、中学受験指導「スタジオキャンパス」創立。指導担当教科は国語と社会。法政大学大学院に通い人文科学研究科日本文学専攻修士課程修了。現在は社会人院生として同大学大学院同研究科国際日本学インスティテュート日本文学専攻博士後期課程に在籍し、学齢児童や日本語学習者の言語運用能力の研究に取り組んでいる。

◆取材・撮影/中野裕子

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