ビジネス

【東京・足立区入谷 酒のすぎさき】商店街の盛り立て役を務める東京・舎人団地の角打ちは居心地がよすぎて、夫婦で来る客も多い名店

 日暮里・舎人(とねり)ライナーの終点、見沼代親水公園駅から徒歩10分、舎人団地前商店街を入ってすぐの場所に、『酒のすぎさき』はある。この店が角打ちを始めたのは、2008年のライナー開通に関係深い。

 2代目店主の杉崎文威さん(47歳)は振り返る。

「新たな駅ができたことで、ここ一帯が宅地開発されて、大型スーパーも進出しました。すると、商店街で買い物をする人がすっかり減っちゃってね、大ピンチだったんです。そこで活性化を願って、元々うちでやっていた焼酎の量り売りと試飲の延長で、角打ちを始めました」

 店主は、そのとき、同じ商店街の店で購入した食品の持ち込みをOKにした。

「うちをきっかけに、この通りには、名店が並んでいることを知ってほしかったんです」(店主)

 向かいの鮮魚店の刺身、お隣の精肉店のコロッケや惣菜、豆腐店の湯葉など、客が思い思いに好みの物を購入しては『酒のすぎさき』に集まるようになってきた。店主の狙い通りに、少しずつ活気が戻ってきたのだ。

角打ちのつまみには、舎人団地商店街で客が購入してきた刺身や惣菜が並ぶ

角打ちのつまみには、舎人団地前商店街で客が購入してきた刺身や惣菜が並ぶ

 また、この角打ちをきっかけに、予想外の人の流れもできた。犬の散歩をする人や、学校や塾帰りの子供たちなど、街行く人々が通りがかりに、「ごきげんよう」「こんにちは」と気軽に挨拶をするようになったのだ。

「店に賑わいがあると、通りを歩く人と目が合うんですよね。こちらからもにこやかに言葉を交わすことが増えました。私も常連さんも、顔を覚えているお子さんが多いんですよ。だからなんていうか、自然と町の子供らの見守り役みたいな存在にもなっています」(店主)

「夜、店を閉めるときお客さんの笑顔が目に浮かぶんですよ」と店主の杉崎文威さん

「夜、店を閉めるときお客さんの笑顔が目に浮かぶんですよ」と店主の杉崎文威さん

 98歳にして現役の長老を筆頭に、店には実にさまざまな世代が集まってくる。65歳の常連は「角打ちのお客さんは私より若い人も多い。みんな、誰かと話をしたいんだよね」としみじみ語る。

 人情深く世話好きな下町らしいエピソードも。コロナ禍に客のひとりが「職を失った」と打ち明けると、その話を聞いた常連が「俺の勤めている会社においでよ」と誘い、そこで働くようになったのだという。

関連記事

トピックス

11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(右/読者提供)
【足立区11人死傷】「ドーンという音で3メートル吹き飛んだ」“ブレーキ痕なき事故”の生々しい目撃談、28歳被害女性は「とても、とても親切な人だった」と同居人語る
NEWSポストセブン
愛子さま(写真/共同通信社)
《中国とASEAN諸国との関係に楔を打つ第一歩》愛子さま、初の海外公務「ラオス訪問」に秘められていた外交戦略
週刊ポスト
グラビア界の「きれいなお姉さん」として確固たる地位を固めた斉藤里奈
「グラビアに抵抗あり」でも初挑戦で「現場の熱量に驚愕」 元ミスマガ・斉藤里奈が努力でつかんだ「声のお仕事」
NEWSポストセブン
「アスレジャー」の服装でディズニーワールドを訪れた女性が物議に(時事通信フォト、TikTokより)
《米・ディズニーではトラブルに》公共の場で“タイトなレギンス”を普段使いする女性に賛否…“なぜ局部の形が丸見えな服を着るのか” 米セレブを中心にトレンド化する「アスレジャー」とは
NEWSポストセブン
日本体育大学は2026年正月2日・3日に78年連続78回目の箱根駅伝を走る(写真は2025年正月の復路ゴール。撮影/黒石あみ<小学館>)
箱根駅伝「78年連続」本戦出場を決めた日体大の“黄金期”を支えた名ランナー「大塚正美伝説」〈1〉「ちくしょう」と思った8区の区間記録は15年間破られなかった
週刊ポスト
「高市答弁」に関する大新聞の報じ方に疑問の声が噴出(時事通信フォト)
《消された「認定なら武力行使も」の文字》朝日新聞が高市首相答弁報道を“しれっと修正”疑惑 日中問題の火種になっても訂正記事を出さない姿勢に疑問噴出
週刊ポスト
地元コーヒーイベントで伊東市前市長・田久保真紀氏は何をしていたのか(時事通信フォト)
《シークレットゲストとして登場》伊東市前市長・田久保真紀氏、市長選出馬表明直後に地元コーヒーイベントで「田久保まきオリジナルブレンド」を“手売り”の思惑
週刊ポスト
ラオスへの公式訪問を終えた愛子さま(2025年11月、ラオス。撮影/横田紋子)
《愛子さまがラオスを訪問》熱心なご準備の成果が発揮された、国家主席への“とっさの回答” 自然体で飾らぬ姿は現地の人々の感動を呼んだ 
女性セブン
26日午後、香港の高層集合住宅で火災が発生した(時事通信フォト)
《日本のタワマンは大丈夫か?》香港・高層マンション大規模火災で80人超が死亡、住民からあがっていた「タバコの不始末」懸念する声【日本での発生リスクを専門家が解説】
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「金の無心をする時にのみ連絡」「断ると腕にしがみついて…」山上徹也被告の妹が証言した“母へのリアルな感情”と“家庭への絶望”【安倍元首相銃撃事件・公判】
NEWSポストセブン
被害者の女性と”関係のもつれ”があったのか...
《赤坂ライブハウス殺人未遂》「長男としてのプレッシャーもあったのかも」陸上自衛官・大津陽一郎容疑者の “恵まれた生育環境”、不倫が信じられない「家族仲のよさ」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 習近平をつけ上がらせた「12人の媚中政治家」ほか
「週刊ポスト」本日発売! 習近平をつけ上がらせた「12人の媚中政治家」ほか
NEWSポストセブン