スポーツ

大谷翔平に対する日米“温度差”の背景にあるのは「日本人差別」か かつてイチローは25セント硬貨を投げつけられた

日米で大谷の言動に対する反応に“温度差”も(時事通信フォト)

日米で大谷の言動に対する反応に“温度差”も(時事通信フォト)

 シーズン本番を迎えたドジャース・大谷翔平(29)。移籍後1年目の大暴れが期待される一方で、いまだに燻り続けているのが元通訳・水原一平氏(39)の「違法賭博問題」だ。大谷が開いた会見について、国内では応援する声が溢れたが、米国メディアは大谷への忖度はない。「説明を果たしていない」という厳しい声も上がっている。

 そうした経過からも浮かび上がるのは、大谷の言動に対しての日米の反応の“温度差”だ。ベーブ・ルース以来の二刀流を成功させ、メジャー史上最高額となる契約を勝ち取った「日本人」──その状況が、必ずしも歓迎されていなかった可能性は否めない。

 何より、海を渡った侍メジャーリーガーは、「日本人差別」に悩まされてきた歴史がある。代表例が、2001年シーズンからマリナーズに所属したイチロー氏だ。在米のスポーツジャーナリストが語る。

「イチローがメジャーリーグの安打記録を塗り替えるたびに、日本人の記録を認めたがらない米国人は少なくなかった。イチローの日米通算4367安打はピート・ローズの4256を超える世界記録ですが、今なおメジャーでの安打数は3089本のみだとして、その価値を認めようとしない米国人も多い。そのローズが野球賭博(注:1989年、シンシナティ・レッズの監督在任中に自軍の勝利に賭けていたと明かしている)でMLBを永久追放されているというのも皮肉な話ですが……」

 メジャーリーグ研究家の福島良一氏が続ける。

「イチローは入団1年目、アジア人の選手ということで差別的な扱いを受けていました。敵地の球場ではスタンドから物が投げられ、ある試合では25セント硬貨がヘルメットに当たったこともあるといいます。

 メジャーリーグのなかでそうした人種差別は今も根強く、一部の人たちが大谷に当時と同じような視線を向けている可能性はあるでしょう」

 水原氏が「ギャンブル依存症」を告白した韓国シリーズでは、仁川空港に到着したドジャースのデーブ・ロバーツ監督に生卵が投げつけられる事件が発生した。逮捕された20代の韓国人男性は、「なぜ外国人を歓迎しなければいけないのか」と“排外的”な動機を供述したというが、大谷にそうした不条理な憎悪が向けられることがあってはならない。

 水原氏の違法賭博問題に未解明な部分が多く残っているのは間違いないし、それについては捜査による真相究明が待たれるが、差別や憎悪の歴史が繰り返されてはならないこともまたたしかだ。大谷が捜査に協力しながら、これまでと変わらない活躍を見せてくれることを願うほかない。

※週刊ポスト2024年4月12・19日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

復興状況を視察されるため、石川県をご訪問(2025年5月18日、撮影/JMPA)
《初の被災地ご訪問》天皇皇后両陛下を見て育った愛子さまが受け継がれた「被災地に心を寄せ続ける」  上皇ご夫妻から続く“膝をつきながら励ます姿”
NEWSポストセブン
子役としても活躍する長男・崇徳くんとの2ショット(事務所提供)
《山田まりやが明かした別居の真相》「紙切れの契約に縛られず、もっと自由でいられるようになるべき」40代で決断した“円満別居”、始めた「シングルマザー支援事業」
NEWSポストセブン
武蔵野陵を参拝された佳子さま(2025年5月、東京・八王子市。撮影/JMPA)
《ブラジルご訪問を前に》佳子さまが武蔵野陵をグレードレスでご参拝 「旅立ち」や「節目」に寄り添ってきた一着をお召しに 
NEWSポストセブン
前田健太と早穂夫人(共同通信社)
《私は帰国することになりました》前田健太投手が米国残留を決断…別居中の元女子アナ妻がインスタで明かしていた「夫婦関係」
NEWSポストセブン
オンラインカジノの件で書類送検されたオコエ瑠偉(左/時事通信フォト)と増田大輝
《巨人オンラインカジノ問題》オコエ瑠偉は二軍転落で増田大輝は一軍帯同…巨人OB広岡達朗氏は憤り「厳しい処分にしてもらいたかった。チーム事情など関係ない」
週刊ポスト
1990年代にグラビアアイドルとしてデビューし、タレント・山田まりや(事務所提供)
《山田まりやが明かした夫との別居》「息子のために、パパとママがお互い前向きでいられるように…」模索し続ける「新しい家族の形」
NEWSポストセブン
新体操「フェアリージャパン」に何があったのか(時事通信フォト)
《代表選手によるボイコット騒動の真相》新体操「フェアリージャパン」強化本部長がパワハラ指導で厳重注意 男性トレーナーによるセクハラ疑惑も
週刊ポスト
違法薬物を所持したとして不動産投資会社「レーサム」の創業者で元会長の田中剛容疑者と職業不詳・奥本美穂容疑者(32)が逮捕された(左・Instagramより)
【国立大に通う“リケジョ”も逮捕】「薬物入りクリームを塗られ…」小西木菜容疑者(21)が告訴した“驚愕の性パーティー” 〈レーサム創業者・田中剛容疑者、奥本美穂容疑者に続き3人目逮捕〉
NEWSポストセブン
国技館
「溜席の着物美人」が相撲ブームで変わりゆく観戦風景をどう見るか語った 「贔屓力士の応援ではなく、勝った力士への拍手を」「相撲観戦には着物姿が一番相応しい」
NEWSポストセブン
違法薬物を所持したとして不動産投資会社「レーサム」の創業者で元会長の田中剛容疑者と職業不詳・奥本美穂容疑者(32)が逮捕された(左・Instagramより)
【20歳の女子大生を15時間300万円で…】男1人に美女が複数…「レーサム」元会長の“薬漬けパーティ”の実態 ラグジュアリーホテルに呼び出され「裸になれ」 〈田中剛、奥本美穂両容疑者に続き3人目逮捕〉
NEWSポストセブン
前田亜季と2歳年上の姉・前田愛
《日曜劇場『キャスター』出演》不惑を迎える“元チャイドル”前田亜季が姉・前田愛と「会う度にケンカ」の不仲だった過去
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 自民激震!太田房江・参院副幹事長の重大疑惑ほか
「週刊ポスト」本日発売! 自民激震!太田房江・参院副幹事長の重大疑惑ほか
NEWSポストセブン