映画『極道の妻たち』シリーズのうち8作品で主演をつとめた岩下志麻。ヤクザの世界で女性が活躍するが、あくまで組長の妻である姐さんだった(時事通信フォト)

映画『極道の妻たち』シリーズのうち8作品で主演をつとめた岩下志麻。ヤクザの世界で女性が活躍するが、あくまで組長の妻である姐さんだった(時事通信フォト)

ヤクザの世界で例外の女たち

 だが例外もある。兵庫県警が「三代目姐」と認定していた三代目山口組組長、田岡一雄氏の妻、文子氏だ。田岡氏の死後、後継問題で混乱した山口組で影響力を持っていたのが文子氏だった。だが立場はあくまで「姐さん」であり、組長ではない。

 山口組で唯一の女組長という肩書を持つ女性がいると、ウェブメディアが報じたこともある。福岡を拠点とする三代目山口組伊豆一家傘下の元会長、小田切波氏だ。彼女は田岡邸で伊豆組長の盃を受けたという。これについて、山口組系傘下の元組長は「山口組の女ヤクザは聞いたことがない」といい、幹部も「女のヤクザなどあり得ない」と語る。

 完全なる男社会の中で女性が組長から盃を受けたとしても、それはあくまでその組内の話、「周りの者が認めていたかもわからない」というのが、元組長や幹部、ヤクザ業界に長く身を置く、置いてきた者の本音のようだ。女が盃をもらったからといって注目されることはない。男たちと同様に役割を持ち、ケンカや恐喝、監禁や管理売春役割などのシノギを行っても噂になることもない。ヤクザが名を馳せるのは彼らが”勲章”と呼ぶ、抗争事件などで相手の組や組長らを襲撃しダメージを与え、逮捕されて有罪になり刑務所にいく時だ。抗争による前科が彼らの勲章であり、それによってヤクザの名前は全国に知れ渡ることになる。

 女ヤクザは稀有な存在だが、それだけでヤクザ業界に名が知れ渡ることはない。そして多くのヤクザは女ヤクザの存在を認めないだろう。今も、そしてこれからも。

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