芸能

高田文夫氏も知らなかった玉袋筋太郎の波乱の日々 「人生は難しい」としみじみ

浅草キッドの玉袋筋太郎について(イラスト/佐野文二郎)

浅草キッドの玉袋筋太郎について(イラスト/佐野文二郎)

 放送作家、タレント、演芸評論家、そして立川流の「立川藤志楼」として高座にもあがる高田文夫氏が『週刊ポスト』で連載するエッセイ「笑刊ポスト」。今回は、浅草キッドの玉袋筋太郎について綴る。

 * * *
 今コンビ活動を休止している漫才の浅草キッド(水道橋博士と玉袋筋太郎)。玉なぞ高校生の頃から『ビートたけしのオールナイトニッポン』をやっている有楽町まで来て、放送が終わって飲みに行くたけし&高田の車をチャリンコでいつも四谷まで追いかけてきた。新宿生まれで新宿育ち、根っからの東京っ子、町っ子なのだ。気性は江戸っ子。ここら辺が私ともよく気が合う由縁。私は渋谷で生まれ世田谷で育ち若き日は西新宿に住み、働きずくめ、飲みずくめだった。

 芸人になってからも兄弟子の“たけし軍団”のように団体芸を極めるのではなく相方と漫才をやりたいと意志表示。キッドはたけしから浅草フランス座へ預けられ、貧しさと芸道を知り、私の処へとび込み漫才ライブをやり続けた。時事ネタと禁止ネタを十八番とする二人は私の懐刀(ふところがたな)だった。

 あの頃から何年たつのだろう。玉から本が届いた。タイトルを見て「ふざけんなこの野郎」とつっこんだが心を落着かせページを開いていった。『美しく枯れる。玉袋筋太郎』(KADOKAWA)だとさ。近年の苦悩など書いてあり私も知らなかった事実まで。「おいっ玉、大丈夫か」というのが率直な感想。

 事務所の問題などで師匠とも別れ、あの騒ぎで相棒とも別れ、独り頑張ろうと始めた“スナック玉ちゃん”もコロナで閑古鳥。初孫は嬉しかったが、認知症気味の母は施設へ。友人、作家の西村賢太には先立たれ、そしてとうとうあれだけ尽くしてくれたいいカミさんも、酒や遊びに愛想を尽かして出て行っちゃった(ちっとも知らなかった)。父の自殺のことまで明かすようになった。

 帯には「なんだかさ 人生ってのは難しいよな?」とあって「玉ちゃん流・人生後半戦の歩き方」。56歳、まだまだやれる。そのうちあの陽気なカミさんだ、帰ってくるに違いない。ドラマ『浅草キッド』は劇団ひとりが手柄をとったが、本家浅草キッドとしては美しく枯れ味が出てくるのではと思う。

 私は心の中で昔から、東京の風景と人の群れを語れる二代目毒蝮三太夫は玉だと思っている。毒蝮と玉の対談を読んでいたら玉が「蝮さんもう87歳でしょ。よくそこまでずっと仕事してますネ」蝮「それはこの名前だよ。前の石井伊吉のままだったら年とって仕事来ないよ。名前をつけてくれた談志にゃ大感謝だネ。玉だってそうだよ。タケちゃんにいい名前付けてもらって飯が喰えるんだから感謝しなくちゃ」「ハイ」。

 浅草キッドは頼りになった。美空ひばりの『東京キッド』ではないが“右のポッケにゃ玉袋~、左のポッケにゃ水道橋~”だった。

※週刊ポスト2024年4月26日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

防犯カメラが捉えた緊迫の一幕とは──
《浜松・ガールズバー店員2人刺殺》「『お父さん、すみません』と泣いて土下座して…」被害者・竹内朋香さんの夫が振り返る“両手ナイフ男”の凶行からの壮絶な半年間
NEWSポストセブン
リモートワークや打合せに使われることもあるカラオケボックス(写真提供/イメージマート)
《警視庁記者クラブの記者がカラオケボックスで乱痴気騒ぎ》個室内で「行為」に及ぶ人たちの実態 従業員の嘆き「珍しくない話」「注意に行くことになってるけど、仕事とはいえ嫌。逆ギレされることもある」 
NEWSポストセブン
「最長片道切符の旅」を達成した伊藤桃さん
「西国分寺から立川…2駅の移動に7時間半」11000kmを“一筆書き”した鉄旅タレント・伊藤桃が語る「過酷すぎるルート」と「撮り鉄」への本音
NEWSポストセブン
ドジャース・山本由伸投手(TikTokより)
《好みのタイプは年上モデル》ドジャース・山本由伸の多忙なオフに…Nikiとの関係は終了も現在も続く“友人関係”
NEWSポストセブン
齋藤元彦・兵庫県知事と、名誉毀損罪で起訴された「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志被告(時事通信フォト)
NHK党・立花孝志被告「相次ぐ刑事告訴」でもまだまだ“信奉者”がいるのはなぜ…? 「この世の闇を照らしてくれる」との声も
NEWSポストセブン
ライブ配信アプリ「ふわっち」のライバー・“最上あい”こと佐藤愛里さん(Xより)、高野健一容疑者の卒アル写真
《高田馬場・女性ライバー刺殺》「僕も殺されるんじゃないかと…」最上あいさんの元婚約者が死を乗り越え“山手線1周配信”…推し活で横行する「闇投げ銭」に警鐘
NEWSポストセブン
伊勢ヶ濱親方と白鵬氏
旧宮城野部屋力士の一斉改名で角界に波紋 白鵬氏の「鵬」が弟子たちの四股名から消え、「部屋再興がなくなった」「再興できても炎鵬がゼロからのスタートか」の声
NEWSポストセブン
環境活動家のグレタ・トゥンベリさん(22)
《不敵な笑みでテロ組織のデモに参加》“環境少女グレタ・トゥンベリさん”の過激化が止まらずイギリスで逮捕「イスラエルに拿捕され、ギリシャに強制送還されたことも」
NEWSポストセブン
親子4人死亡の3日後、”5人目の遺体”が別のマンションで発見された
《中堅ゼネコン勤務の“27歳交際相手”は牛刀で刺殺》「赤い軽自動車で出かけていた」親子4人死亡事件の母親がみせていた“不可解な行動” 「長男と口元がそっくりの美人なお母さん」
NEWSポストセブン
荒川静香さん以来、約20年ぶりの金メダルを目指す坂本花織選手(写真/AFLO)
《2026年大予測》ミラノ・コルティナ五輪のフィギュアスケート 坂本花織選手、“りくりゅう”ペアなど日本の「メダル連発」に期待 浅田真央の動向にも注目
女性セブン
トランプ大統領もエスプタイン元被告との過去に親交があった1人(民主党より)
《電マ、ナースセットなど用途不明のグッズの数々》数千枚の写真が公開…10代女性らが被害に遭った“悪魔の館”で発見された数々の物品【エプスタイン事件】
NEWSポストセブン
大谷翔平と真美子さん(時事通信フォト)
《ハワイで白黒ペアルック》「大谷翔平さんですか?」に真美子さんは“余裕の対応”…ファンが投稿した「ファミリーの仲睦まじい姿」
NEWSポストセブン