『ぼくらの七日間戦争』で日本アカデミー賞新人賞を受賞した宮沢りえ
「子どもも大人も差がない」作品への眼差し
それにしても、95歳にして、子どもに向けた作品を書き続けられたとは驚異的だ。
宗田さんは日本大学芸術学部映画学科在学中に映画のシナリオを書き始め、その後は週刊誌の編集長を務めるなど編集者として活躍。1979年、情報小説『未知海域』(河出書房新社)で作家デビューすると直木賞候補に。当時、51歳。『ぼくらの七日間戦争』を書いたのは56歳だった。年の離れた子どもの心に響く作品を書き続けられるのは、なぜなのだろうか。
「自分ではよくわかりません。ただ、もともと“子どもに寄り添う”という考えがありません。僕の作品には子どもなのに思慮深い子や、逆に大人なのに間の抜けた人物がたくさん出てきます。それは、子どもと大人をあまり区別していないからだと思います。僕のなかでは、子どもも大人も差がないのです。
小説を書くときも、子どもが読むのだからこの程度でいいだろう、とか、子どもだからこういうことをおもしろがるに違いない、などと考えていません。自分がおもしろいと思うことを書いているだけ。大人が読んでも楽しめる、日常とは違うワクワクするような冒険小説を届けたい、と思っています」
時代による変化はどうだろうか。今の子どもや大人を、宗田さんはどう見ているのだろうか。
「本質は変わらず、今の子どもたちも友情や冒険が好きで、仲間と一緒に秘密基地を作ってしかけを考えたり、悪い大人にいたずらをしたりするストーリーにワクワクするものだと思っています。
先日、高校生の読者と会う機会があり、『今の教師は優しく、親はあまり子を叱らないとも聞くが、『ぼくらの七日間戦争』のような話に共感できるのか、おもしろいと感じるのか』と聞いてみました。
すると、彼らは『時代劇を楽しむように読んでいる』と答えました。悪い教師をやっつけるのは、越後屋や悪代官を懲らしめるのと同じ感覚だそうです。理不尽な権力にもの申す、というのは、やはり普遍的なテーマなのでしょう」