中国での仕事は雑誌モデルから始まった

中国での仕事は雑誌のモデルから始まった

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 2012年9月11日、民主党の野田佳彦政権が尖閣諸島を20億5000万円で購入し、国有化した。尖閣諸島を中国領土だとするナショナリズム意識から、中国各都市では大規模な反日デモ活動が巻き起こったのだ。同年、習近平政権が発足し、日中間は緊迫の度合いを増していくことになる。

「2012年後半、私は抗日ドラマ『砂漠のオオカミ』の撮影に臨んでいました。私が演じたのは日本人の女スパイで、悪の首領という役どころ。今までのドラマの中でも一番の大役でした。でも、寧夏回族自治区・銀川での撮影は私にとってはとても苦しい日々でした。

 中国のドラマは政府の国家新聞出版広電総局による検閲を受けます。抗日ドラマは勧善懲悪のストーリーですが、現場では監督が『日本人も人間であり、葛藤もする』というストーリーで撮影をすることも多い。ただの悪役じゃない描き方をするのです。しかし、当局によって最終的には『日本人=極悪』という図式で改編されてしまう。

 習近平政権になってからは、さらに当局の締め付けが厳しくなり、そもそも日本人俳優の起用が駄目だと言われるようになった。これまでのドラマでは『井上朋子』として出ていたのに、『砂漠のオオカミ』では『朋子』という名前でキャスティングされました。たまたま朋子という名前が中国風に見えるので、中国人俳優かのような体裁で当局の検閲を通したのです。

 反日デモが吹き荒れるなか、中国人の悪感情はこれまでになく高まっていました。映画スタッフからも『尖閣を返せ!』『お前は、南京大虐殺を知っているのか!』と罵声を浴びせられました。これまではそんなことを言われても『じゃあ絶対に日本に旅行に行くなよ!』とか『日本の電化製品買うなよ!』と強気に言い返してたのですが、このときはさすがに精神的に追い詰められてしまった。

 あるとき音声スタッフに、『いま戦争起こったらアナタどうすんの? こんな中国の田舎に日本人一人でさ』と言われて。皆がそれを聞いて笑ったのです。私はスタッフの言葉がよく聞き取れなかったのですが、皆に笑い物にされた瞬間に涙が溢れてきて。大泣きしてしまいました。色々溜まっていたものが堪えきれなくなってしまったんだと思います。

 悪役が泣き顔になって、監督も困ったのだと思います。『このカメラもSONY製だからさ』と慰めてくれて。以後、撮影中は尖閣諸島の話は禁止にしてくれました。『砂漠のオオカミ』で初めて大きな役を得たことで、次は女優として主演作品に出たいという気持ちが強くなった一方で、日本人俳優に対する規制もあり、今後自分はどうなってしまうんだろう、という不安が生まれていきました」

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