赤いパンツのプロデューサーとの騒動
そんななかで、ある“事件”が起きる。
「それまでも監督やプロデューサーから枕営業の誘いは山ほどあったのですが、応じることはしませんでした。あるときはドライブ中に枕営業を持ち掛けられ、キッパリ断わったら誰も来ないような真っ暗な雪道に捨てられたこともありました。でも、このときだけは自分の中に余裕がなかったのかもしれません。
撮影が終わり、北京で『砂漠のオオカミ』のプロデューサーと食事をしていたときのことです。プロデューサーから『君が僕のホテルに来てくれたら、次はもっといいポジションでキャスティングするからね』と囁かれたのです。このプロデューサーは『砂漠のオオカミ』の撮影のときも、4人の親密な女優を連れてきていて、みな同じホテルの部屋に泊まらせていました。つまり、このプロデューサーには絶大なキャスティング権があることは明らかでした。
私が呼ばれたのは北京のある高級ホテルでした。かなり迷いましたが、中国芸能界で生きていくためには必要だと自分に言い聞かせて、覚悟を決めました。プロデューサーが投宿する高層階に向かうと、彼は大きなリビングルームとベッドルームがあるラグジュアリーな部屋でくつろいでいました。
プロデューサーは『よく来たね』と、私に笑顔を向けてきましたが、いざその場面になると心が揺らぎ、『少し、トイレに行かせてください』と言ってトイレで悶々としていました。もう一回決意を固めてリビングに戻ると、プロデューサーは裸にパンツ姿で、ワイングラスを片手に赤ワインを飲んでいたのです。しかも金の鈴のついた赤いパンツを穿いているのです。
中国では年男は1年を通じて赤パンツで過ごすという風習があるのですが、彼は年男だったようでした。プロデューサーの赤パンツを見た瞬間に、ハッと我に返り、『やっぱり無理です!!!』と叫んで部屋から猛ダッシュで逃げ出しました。
幸いプロデューサーは裸だったので、部屋の外までは追いかけられず、難を逃れることができました。この赤パンツのプロデューサーは、その後数々の不正がバレ、業界からいなくなってしまいました。枕営業をしたからといって必ず仕事がもらえるわけでもないし、一時の気の迷いで変なことをしないで本当に良かったと思います(笑)」