白いリボンバラの真ん中に30の金文字が輝く『山口組新報』第30号表紙
目立っていた「神頼み」
毎号笑いを誘って人気の夫婦関係を詠んだ句では〈俺の嫁 国産なのに 高燃費〉〈ハンドルを おかんに持たせ 足がつる〉と嘆き、〈お会計 スマホ貸してと 連れの声〉〈初風呂も 妻に頼まれ 風呂掃除〉と、外では見栄を張り、肩で風切るように歩くと言われてきたヤクザが、家庭では妻に虐げられているような実態が読まれている。
趣味に関するものでは〈名人に 勝っているのは 碁歴だけ〉という句が詠まれていた。これだけ大谷翔平選手が騒がれているのにアメリカメジャーリーグや日本のプロ野球に絡めて詠まれた句は、著者の知る限り見たことがない気がする。野球だけでなく相撲やサッカー、ゴルフなど、彼らはどんなスポーツでも賭けの対象にし、そこで勝ち負けの駆け引きを楽しむからだろうか。
そんな中、今回の号で目立っていたのが“神頼み”だ。ヤクザ業界は暴対法に暴排条例に、山口組の分裂による対立抗争で特定抗争指定暴力団に認定された組では事務所の使用を禁止され、シノギが厳しくなってきたといわれていたところにコロナ禍が追い打ちをかけたのだ。組織の運営もシノギも厳しくなっている昨今の現状に神頼みとばかりに〈吉と出た おみくじ見つめ 我次第〉〈宝くじ 今年も当たる 三百円〉〈年の瀬に 勝負掛けます 宝くじ〉〈年が明け 賽の目変わる 今年こそ〉と、運を味方につけたいヤクザの心境がよく表れていた。
取り締まりが年々厳しくなり、ホテルに宿泊してもスーパーのポイントカードの取得でも身分詐称で逮捕され、組員が関わった詐欺事件などでは組長が使用者責任で逮捕されるヤクザの現状に、日々不公平感を募らせている者も多い。そんな彼らの心情を詠んだのが〈政治家の 使用者責任 何処へと〉だが、ヤクザにこのような句を詠まれるとは、日本の政治家も襟の正し方を考え直した方がいいだろう。