『少女A』『ミ・アモーレ』『DESIRE』などヒット曲を連発(写真は1986年、FNS歌謡祭)
美空ひばりの先へ
歌姫の復活を目前にして、中森氏も胸が高まる。
「中森明菜は“昭和の記憶を伝える最後の歌姫”です。ファンの間では、1980年代の彼女の強烈な輝きがそのまま封印されて、波乱に満ちた平成の30年を経て令和の現在に至ります。僕は美空ひばりさんの最後の東京ドーム公演(1988年)を見ましたが、当時50歳のひばりさんは2年後にこの世を去って“伝説”になりました。ひばりさんの系譜を継ぎ、その先に行くことができるのは明菜さんしかいないと思う」(中森氏)
『スタ誕』で明菜をスカウトした初代音楽ディレクターで“生みの親”とされる島田雄三氏は、最新のYouTubeの動画をあえて見ないようにしているという。“少女”から成長した明菜を少し遠くから見守っていると語る。
「プロデューサー人生の中でも明菜はもう二度と現われない逸材で、担当を外れた後も他の歌手の曲を聞くと『明菜に歌わせたらどうか』とつい考えさせるような歌手です。彼女の強烈な才能を活かすのは裏方次第。明菜の歌を聞いたら、つい良い悪いと言いたくなってしまうから、やめています。それに天邪鬼の彼女は褒めると伸びないから、あえて何も言わないようにもしているんです(笑)」
明菜の原点は、まだ一般人だった頃に他のアイドルのコンサートやサイン会に足を運び、憧れてきたこと。だからこそ、彼女はファンのために歌うのだと島田氏は語る。
「表に出ない時期もファンを大切にしてきたのは、待ち構えているファンの気持ちが誰よりもわかるから。それに彼女は、自分から歌を取ると何も残らないことを知っている。これからも歌を諦めることは絶対にないでしょう。
このところ歌手・明菜を支える環境が整ってきて、スタッフとも良好だということが僕の元にも聞こえています。人生の積み重ねで色んな経験をした明菜だからこそ、いい歌が歌える状況にあるのは間違いない。7月13日の復帰という山を越えれば、明菜は60代、70代、80代になってもステージでファンを感動させられるはず。僕はいつまでも応援しています」
時代を超えた歌姫が間もなく帰ってくる。
(了。前編から読む)
※週刊ポスト2024年5月17・24日号
