【5】パートナーと寝る場合、寝具は分けて寝たほうがいい。掛け寝具はもちろん、マットレスも2つに分かれているほうがいいですね。温度の好み、布団の重さの好みは十人十色なので、一人ひとり自分の好みに合わせたほうがいいと考えます。日本では、親子が川の字になって眠ることも少なくありませんが、これでは、子どもの睡眠が親に引っ張られて、就寝時間が遅くなり、子どもの睡眠不足にもつながります。また、親も子どもに蹴っ飛ばされて目を覚ますことだってあるでしょう。睡眠学的に言うならば、別々に寝ることが理想です。
【6】電車に乗っているとき舟をこぐのは寝ているうちに入りません。自分では寝ているつもりでも、覚醒とまどろみの間を行き来しているだけなのです。海外では人前で眠ることは、異常な行動、あるいは病気ではないのかと疑われます。通勤電車で寝るぐらいなら、その分を家で眠って、電車では仕事をするほうが時間の有効利用となります。
【7】睡眠の時間をあらかじめ確保しておきましょう。毎日、十分な睡眠時間を確保しておくのも重要です。睡眠は住宅ローンの支払いと同じで、最初から必要な分を取っておかないと、後で破綻します。私の場合、午前0時から午前7時までは睡眠以外のことをしない時間として取ってあります。
【8】寝るための酒、いわゆる寝酒は絶対にやめましょう。諸外国に比べ、日本に多いのは寝酒の習慣です。眠れないので酒を飲んで寝ようとする人が圧倒的に多いのが日本なのです。けれども、寝るために酒を飲むのは最悪の選択肢です。確かに催眠作用はあるので眠くはなりますが、体内でアルコールが分解されると、アセトアルデヒドとなって交感神経が優位になり、睡眠の質が落ちます。もしも、本当に眠れないで困っているのなら、専門医にかかって、睡眠薬を飲んで眠るほうがはるかに安全です。
【9】自分自身に合った入眠の儀式を作るのもいいでしょう。自分にとってこうすれば眠れるという儀式を見つけることができれば幸いです。好きなアロマオイルを焚いたり、本を読んだり、温かいミルクを1杯飲んだりといった簡単に繰り返すことができる儀式的なルーティーンはとてもいい。子どもでよく言われるのは、歯を磨いて、ベッドに入って、親に絵本の読み聞かせをしてもらうと眠くなるというパターンですが、こうしたことは、大人にもあてはまります。私自身の入眠のための儀式は、つまらない論文を読むことです。すると、3~4分で眠ってしまいます。
私は柳沢教授が開発に関わった新しい睡眠薬「デエビゴ」の服用をはじめ、これらのメソッドも試している。快眠は手に入れられるだろうか。追って報告する。
【プロフィール】
横田増生(よこた・ますお)/1965年福岡県生まれ。関西学院大学を卒業後、予備校講師を経て、アメリカ・アイオワ大学ジャーナリズム学部で修士号を取得。1993年に帰国後、物流業界紙『輸送経済』の記者、編集長を務める。1999年よりフリーランスとして活躍。ユニクロなど大企業への潜入取材で知られ、2020年、『潜入ルポ amazon帝国』で第19回新潮ドキュメント賞を受賞(『潜入ルポ アマゾン帝国の闇』と改題し新書化)。
(前編から読む)
※週刊ポスト2024年5月17・24日号