鍋島松濤公園トイレを、ガイドの説明を聞きながら熱心に見学する参加者たち
暗い、汚い、臭い、怖い
TTTは、2018年から渋谷区、日本財団、「ユニクロ」などを運営するファーストリテイリングの柳井康治取締役が中心となって進めたプロジェクトだ。
「2021年の東京五輪を機に、公衆トイレのあり方を日本のおもてなし文化の象徴と見立て、暗い、汚い、臭い、怖いといった印象を払拭し、誰もが快適に使用できるように一新させようというところから企画が始まったそうです。設計には建築家の安藤忠雄さん(82才)や隈研吾さん(69才)など、日本を代表する錚々たる面々がかかわりました」(全国紙社会部記者)
アーティスティックなデザインのみならず、機能面でもさまざまな技巧が凝らされている。例えば、平時は透明で中が見える状態だが鍵をかけると不透明になるトイレがあったり、音声指示ですべての用を済ませられるトイレがあったりするのだ。
目的地に到着した前述のツアー参加者は、驚きを隠さず、さまざまな角度からトイレを写真に収める。ウサギがあしらわれた幼児用トイレのデザインの作り込みに興奮する人、代わる代わるトイレを使ってはどれほど快適かを熱く語り合う夫婦など、いずれもトイレに夢中だ。
「TTTプロジェクトは、利用者の意識変革も必要だと考えたそうです。美しいトイレを利用する際に、気を使い、その美しさを維持することもまた、日本人らしいおもてなしのあり方であると提案しました」(前出・全国紙社会部記者)
そうした意識改革を目的として、プロジェクトの一環で製作されたのが、映画『PERFECT DAYS』(2023年公開)だった。監督は、小津安二郎を敬愛するドイツ人の親日家、ヴィム・ヴェンダース。主人公のトイレ清掃員・平山を演じたのは役所広司(68才)で、ロケ地には、TTTプロジェクトで生まれ変わった12か所のトイレが使われている。2023年5月、役所がカンヌ国際映画祭で最優秀男優賞を受賞し、現在もロングラン上映中である。
役所は同作品が評価された理由について、会見で次のように語った。
「ぼくの演じた平山という男は、財産はほとんどないけど、トイレを清掃し、公衆浴場に入り、好きな文庫本を読んで毎日幸せな気分で眠りにつく。美しい人間の生き方として伝わったんじゃないか」
