クラゲと間違えてプラスチックのごみを食べようとするウミガメ(写真/アフロ)
恐ろしいのはそのリスク因子が、私たちの身の回りにあふれていること。
マイクロプラスチック汚染を研究する東京農工大学教授の高田秀重さんが解説する。
「レジ袋やペットボトルとそのキャップ、コンビニの弁当容器、食器用のスポンジなど、あらゆるプラスチックはごみとして捨てられたり、あるいは野外に放置されると紫外線や大気中の酸素などによって少しずつ劣化し、微細化されてマイクロプラスチックに変化していきます。ポリエステルなど化学繊維の衣服を洗濯すると繊維のクズが出ますが、それもマイクロプラスチックのもとです」
マイクロプラスチックはどんなに劣化して細かくなっても、蒸発もせず吸収もされずに残り続ける。そして年月を経て原形をとどめなくなったマイクロプラスチックは雨水とともに側溝に流れて川に至り、やがて海や湖にたどり着く。
「海や湖に運ばれる過程で波や砂によって風化したマイクロプラスチックはさらに断片化します。それらを魚や貝、海鳥などがエサと間違えて食べると消化器官が傷ついて生態系に影響したり、深刻な海洋汚染が引き起こされます。当然、マイクロプラスチックを蓄積した魚や貝などを人間が食べれば、体内に入ります」(高田さん)
かつてマイクロプラスチックは体の中に入っても吸収されることなく、排出されるので安全と考えられていたが、近年の研究ではそれが誤りであることが示唆されている。
2022年、オランダのアムステルダム自由大学などの研究チームが健康な22人の血液を調査したところ、17人の血液中からマイクロプラスチックが検出された。
科学ジャーナリストの植田武智さんが語る。
「実に77%の割合です。この研究により、体内に入り込んだマイクロプラスチックはすべて排出されるわけではなく肉眼では見えないサイズのプラスチックのかけらが残留し、血流を介して全身を循環する可能性があることが初めて示されました」
高田さんが続ける。
「0.1mmほどのマイクロプラスチックは便や尿と一緒に体外に排出されますが、それよりもサイズが小さくなると排出されにくくなり、血管の中に入り込みます。これにより、血管が詰まって心筋梗塞や脳梗塞などの血管疾患のリスクが増す可能性が指摘されています」
マイクロプラスチックは汚染された魚介類を介して体内に入るだけではない。高田さんは、ペットボトルなどの「プラスチック製容器」からの混入を危険視している。
