芸能

【仕掛人たちが語る聖子vs明菜の分岐点】松田聖子は新しいアイドル像を求めた聖子、アーティストへ舵を切った明菜 1984年という“特異な1年”

中森明菜は1982年10月、新宿音楽祭で審査員特別奨励賞を受賞。『少女A』でブレイクした最中の受賞だった(写真/女性セブン)

中森明菜は1982年、『少女A』をリリース。新宿音楽祭で審査員特別奨励賞を受賞(写真/女性セブン)

 松田聖子と中森明菜が揺るぎない地位を確立した年、それが1984年だった。デビューからプレイクを支えた仕掛け人たちが“特異な1年”について語った。

 聖子のデビュー曲『裸足の季節』(1980年)の編曲を手掛けた信田かずお氏は当時をこう振り返る。

「デビュー前からすでに、中低音から高音までの伸び、表現力、歌唱力が完璧に備わっていました。1983年の『瞳はダイアモンド』などのバラード曲は、艶っぽいビブラートで歌い上げる歌唱も完全に自分のものにしていて、洗練された歌手になったと感じていました」

 一方、明菜のブレイクのきっかけとなった『少女A』(1982年)を作詞した売野雅勇氏は、明菜の転機についてこう語る。

「『少女A』など私の作詞した楽曲を比べて思うのが、『十戒〈1984〉』(1984年)で明菜さんの歌い方が完成したということ。彼女は楽曲によって歌のトーンや色合いを変幻自在に変えるんです。アイドルの顔を続けてはいたけれど、ボーカリストへの転身を宣言したのが『十戒〈1984〉』だったと思っています」

 当時、ワーナー・パイオニア(現ワーナーミュージック・ジャパン)でプロモーションを務めた田中良明氏も、1984年が明菜の転機になったという。

「デビュー当初から、衣装に対し『これに憧れる同年代はいない』など、押し付けられた十代のイメージをはっきり否定する自己主張ができる人でした。1984年の『飾りじゃないのよ涙は』は、井上陽水さんの尖った楽曲イメージを明菜なりに昇華させた曲で、衣装も明菜のセンスを鮮明に打ち出したもの。聖子とも百恵とも違う、まったく新しいアイドルの誕生に立ち会えたと、震えるほど感動したのを覚えています」

 聖子にとっても1984年は特異な1年と語るのは、音楽評論家の中川右介氏。

「1983年は『天国のキッス』でアイドルポップスの頂点を極め、『SWEET MEMORIES』『ガラスの林檎』でバラードも歌えることも示し、やるべきことはすべてやった達成感があったと思います。1984年に入ると『時間の国のアリス』『ピンクのモーツァルト』など、歌謡曲の枠組みを超えた前衛的な曲が続き、これは新たなアイドル像、つまり第2期の聖子を模索するための実験だったといえます。それにしても、どんな曲でも売れるので、かえって、次は何を歌わせようか、松本隆さんをはじめ、作詞家、作曲家、制作陣もかなり頭を悩ませたでしょうね」

関連キーワード

関連記事

トピックス

長男・泰介君の誕生日祝い
妻と子供3人を失った警察官・大間圭介さん「『純烈』さんに憧れて…」始めたギター弾き語り「後悔のないように生きたい」考え始めた家族の三回忌【能登半島地震から2年】
NEWSポストセブン
古谷敏氏(左)と藤岡弘、氏による二大ヒーロー夢の初対談
【二大ヒーロー夢の初対談】60周年ウルトラマン&55周年仮面ライダー、古谷敏と藤岡弘、が明かす秘話 「それぞれの生みの親が僕たちへ語りかけてくれた言葉が、ここまで導いてくれた」
週刊ポスト
小林ひとみ
結婚したのは“事務所の社長”…元セクシー女優・小林ひとみ(62)が直面した“2児の子育て”と“実際の収入”「背に腹は代えられない」仕事と育児を両立した“怒涛の日々” 
NEWSポストセブン
松田聖子のものまねタレント・Seiko
《ステージ4の大腸がん公表》松田聖子のものまねタレント・Seikoが語った「“余命3か月”を過ぎた現在」…「子供がいたらどんなに良かっただろう」と語る“真意”
NEWSポストセブン
今年5月に芸能界を引退した西内まりや
《西内まりやの意外な現在…》芸能界引退に姉の裁判は「関係なかったのに」と惜しむ声 全SNS削除も、年内に目撃されていた「ファッションイベントでの姿」
NEWSポストセブン
(EPA=時事)
《2025の秋篠宮家・佳子さまは“ビジュ重視”》「クッキリ服」「寝顔騒動」…SNSの中心にいつづけた1年間 紀子さまが望む「彼女らしい生き方」とは
NEWSポストセブン
イギリス出身のお騒がせ女性インフルエンサーであるボニー・ブルー(AFP=時事)
《大胆オフショルの金髪美女が小瓶に唾液をたらり…》世界的お騒がせインフルエンサー(26)が来日する可能性は? ついに編み出した“遠隔ファンサ”の手法
NEWSポストセブン
日本各地に残る性器を祀る祭りを巡っている
《セクハラや研究能力の限界を感じたことも…》“性器崇拝” の“奇祭”を60回以上巡った女性研究者が「沼」に再び引きずり込まれるまで
NEWSポストセブン
初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン