そうした事情も影響しているのだろうか、近年は女性審判が男子の試合の審判員を務めることも増えている。2021年の東京五輪では、個人種目の大トリとなった男子100㎏超級決勝の主審を天野安喜子(国際柔道連盟審判員、東京五輪では唯一の日本人審判)が担当した。だが、正木は否定的な見解を持つ。
「どんなに優秀でも女性審判が男子の試合を担当するのは反対です。審判の人員の兼ね合いもあるとはいえ、その逆(男性審判が女子の試合を担当)も賛成できない。男子選手と女子選手では力も動きも違う。男子は男子の試合、女子は女子の試合の審判をやったほうがいいと考えています」
(了)
※『審判はつらいよ』(小学館新書)より一部抜粋・再構成
【プロフィール】
鵜飼克郎(うかい・よしろう)/1957年、兵庫県生まれ。『週刊ポスト』記者として、スポーツ、社会問題を中心に幅広く取材活動を重ね、特に野球界、角界の深奥に斬り込んだ数々のスクープで話題を集めた。主な著書に金田正一、長嶋茂雄、王貞治ら名選手 人のインタビュー集『巨人V9 50年目の真実』(小学館)、『貴の乱』、『貴乃花「角界追放劇」の全真相』(いずれも宝島社、共著)などがある。柔道の審判員のほか、野球やサッカー、飛び込みといった五輪種目を含む8競技のベテラン審判員の証言を集めた新刊『審判はつらいよ』(小学館新書)が好評発売中。